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逆転迷路  作者: シーバル
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逆転迷路②

前作、逆転迷路①の続きとなります。


※livedoorブログ「風来坊まとめ」へも同様の文章を掲載しております。

「今、、何て言ったんですか?」



聞こえなかった訳ではない。

ただ、話が唐突過ぎて、おじさんの言った言葉を綺麗に昇華することができなかったのだ。



「君は亡くなったんだ。、、ただ、完全にではない」



「どういう事ですか?」



「、、臨死って言葉を知っているかい?」



臨死とは、現世とあの世の境をさ迷うこと。

また、一度死んだと見なされたのちに、再び生き返ることを指す。



「、、つまり、僕らは生と死の境にいるという事ですか?」



「そういうことになるね、、」



頭が真っ白になってしまった。

外界にはない特別な場所だとは理解していたつもりだった。

ある意味では、自分が特別な存在なのだとまで思っていたのだ、、

だがしかし、死んでいるのでは話が変わってくる。

事態が悪い方へ、一変したとでも言える状況に彼はさらに突き放す。



「君が居る場所は無だ。例えるのなら、来たばかりで、フワフワしている状態。仮にも死んでいるのだから、食事に休息、その他いっさいを必要としないだろうが、

ただ、今の状況を理解できなければ、一生ここから抜け出せないこともある」



「あの世は一つの空間で繋がっているため、君とこうして話せてはいるが、厳密に言うと、距離が違う。君とおじちゃんは同じ所にも居なければ、感じているものも違うということになるのさ」



僕の意見を聞きたいのだろうか、そこまで言うと、おじさんは一度黙り込んだが、とてつもなく大き過ぎる問題になんと答えたら良いのかもわからずに、無責任でもあることを口にする。



「僕はいったいどうしたらいいんですか?」



おじさんは、一息つくように空気を吐き出すと、再び僕の問いに応じた。



「、、先ずは、認めるのさ、自分が死んでいるということを。そして、見つめ治すんだ。自分がどうして死んだのか?そして、何故生きたいのかを?」



何故生きたいのか、おじさんはそう言うが、俺はまだ、自分が死んだことを完全に受け入れてはいない。

だが、生きたいという言葉を別な言葉に置き換えて考えるのならば、一つ疑問に思うことがある。俺は何故戻りたいのだろう?



考えている私におじさんは続けた。



「、、少しためになる話をしよう」



「君は、ここに来てからおじちゃん以外の誰かに会えたかい?」



「いえ、あなたが初めてです」



おじさんには、その事がわかっていたのか、再び話始める。



「去年の世界での死亡者数は約5500万人、1日当たり15万人、つまり、去年だけで、おおよそ3秒に一人は亡くなってる計算になる。しかも、例年同じぐらいの方が亡くなっているという事は知ってたかい?」



知らなかった。

そして、その桁違いな多すぎる数に絶句し、言葉がでなかった。



「つまり、君がこうしている間でも、世界の何処かでは、人が亡くなり続けている。ここが、どういう所なのかは説明したね?」



「生と死の境。ただ、ここに来るためには、亡くなる以外に1つだけ条件がある」



素直に知りたいと思った。俺がここへ来る事になった理由にもなるのだから。



「条件というのは?」



「ここへ来られるのは、生きられる可能性のある物だけだ」




「、、、、」




「ここへは、君がいなくなった後も、亡くなった誰かがやってくるだろう、、でも一度、自分中心に考えてみるといい、、数字だけで、考えるのならば、君以外の4499万9千9百9十9人は何も選ぶこともできずに、先に行ったということを、、」



「君は、それについて、どう思うかな?」



「、、、、」



「数字だけで考えてはいけないよ。人一人一人亡くなり方があるのだから。それが、事故なのか、災害なのか、はたまた事件なのか、それとも、、」



実はこの時。何が正しいのか、自分なりに、答えがでていた。

だけど、直ぐにはその事を言い出せずにいた。

考えてみたかったのだ。

深く、、自分の中にある、あらゆる、意見を照らし合わせて。

それが、おじさんの言うように、見つめ直すこと。そして、自分を否定することになるのだから。




「、、一度変わったツキなんてものはそう簡単に変わるものではない。」




「おじちゃんが教えられるのはそのぐらいだよ」




というと、おじさんは、そろそろ先に行くと言って、窓を閉めようとする。




そこで、俺はすかさず、お礼を言うと、おじさんが何かを思い出したように、閉じかかった窓を少し降ろした。




「あ、それと、アドバイスをもう一つ。標識は見てるかい?」




これまでなかった事から、特に気にしてはいなかったのだか、確かにここから少し離れた先に、板を載せたポールが建っている。




「これからは見てみるといい。そして、後は君が決めるんだ。」




「大丈夫だから」




終始、おじさんは落ち着いた口調だったが、最後は背中を押したつもりなのだろうか、その言葉は力強く、、それだけ伝えると、サイドガラスが閉まりきる前に、パッと隣から消えてしまった。



と、同時に、自分が本当に亡くなっているのだと理解できた。



精神世界、何でもありと言ったらそれまでなのだろうが、やはり、心の波が関係しているのだろう。



それまで、何もなかった、道路に道標が現れ、それを、見上げて、一筋の冷や汗が滴り落ちた。



記憶は再び戻り、ゆっくりと思い出していく。



、、、



いや、本当は薄々わかっていたのだろう。




そして、はっきりと気づく。




自分の犯してしまったことへの重大さに

、、




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