僕の世界
僕は色のない世界を過ごしている。
「大学にはいれば楽しい」そんな言葉は嘘だったんだ。
誰も僕を見てくれない。
ただただ、いじめが続く毎日。
今日も同じようにいじめられるもんだと思っていた、彼女に出会うまでは...
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放課後の教室内
「今日の分のお金はもってきたぁ~?」
ヤンキーがニヤニヤしながら近づいてくる。相変わらず胸糞悪い顔だ。
でも僕は弱いから従うだけだ。
「はい...持ってきました...」
僕はお金を渡す。
「おっ、さっすが~ どれどれ.....あ?足りてねぇじゃねぇか!おい!」
机を叩いてヤンキーが喚く。
「俺との約束忘れたわけじゃねぇよな~?毎日1000円もってこいって言ったよなぁ?」
「バイトの予定が急に変わって用意できなく...」
「あぁ!?ふざけんなよ!?そんな言い訳はどうでもいいんだよ!」
ヤンキーが僕の言葉を遮って言う。
「は~あ テンション下がったわ、一発ぶん殴らせろよ。」
「殴るのだけは―――」
頬に衝撃が伝わった。
そして僕は漫画みたいに派手に吹っ飛ばされたようだ。
机や椅子にぶつかって大きな音がなる。
「おまえってほんとグズだな、次金持ってこなかったら、ただじゃおかねぇからな。」
ヤンキーはそう言い残し教室から立ち去っていった。
(マジで痛ってぇ...)
そうぼやき、僕は立ち上がって荒れてしまった椅子や机を片付けを始めようとする。
その時、教室のドアが開いた。
ドアの前には驚いた表情で女の人が立っていた。
「すごい音がしたから来てみたけど、どうしたの....?」
(確かクラスのアイドル的存在の奴だっけ)
僕は彼女の言葉を無視して片付けを始めた。
「わ、私も手伝うよ。」
そういって彼女は手伝おうとした。
「ほっといてくれ、同情なんていらない。」
「どうしてそんな悲しいことをいうの!?同じクラスじゃない!」
そういって彼女はせっせと手伝いだす。
僕はそんな彼女が眩しく見えた。
でも僕は知っている。こういう女はすぐ裏切るんだ。
だから僕は
「やめてくれ。お前も最初だけなんだろ。」
彼女は首をかしげて
「どういうこと?」
と言った。
「お前も自分の立場が悪くなったらすぐに僕を無視するんだろ。」
「私はそんなひどいこと絶対にしない。不安なら私はずっとあなたのそばにいてあげるわ。」
僕は驚いた。こんなバカみたいなことを言われるのが初めてだったからだ。
でもそんなバカみたいなことでも心が暖かくなった気がした。
「あなた...泣いてるわ」
「え....」
僕は静かに泣いていた。自分でも理由はわからない。
しばらく泣いてなかったからか、止まる様子もない。
そしたらこんな僕を彼女が抱きしめてくれた。
暖かい。
これが僕と彼女の出会いだった。
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2週間後。
僕はまだいじめられていた。
彼女と一緒にいる時はいじめは起こらないけど、
彼女がいない時はいじめられた。
でも彼女に心配をかけさせないように何も言わないことにしている。
彼女と一緒の時間が多いから、周りからは付き合っていると思われている。
嫌な視線を感じる。
それもそうだ。僕みたいな地味な奴がクラスのアイドルと一緒に帰ってるからだ。
僕の家は大学から近いから、よく目撃されるのかな?でも僕は気にしていない。
なぜなら事実なのだから。
そう、僕らは付き合い始めたんだ。
そんなある日の放課後
「今日は少し用事があるから校門の前で待ってて。」
「わかった、待ってるよ。」
彼女はそう言って去っていった。
(よし、早く用事終わらせて彼女と帰ろう。)
用事に取り掛かろうとしたら、教室のドアが開いた。
そこにはヤンキーが立っていた
「お前最近調子乗ってねえか?」
「なんのことだよ。」
「お前さぁ、彼女出来たからって調子乗ってんだろ。」
「そんなことねぇよ。」
「その口調だよ!ふざけんじゃねぇぞ!」
ヤンキーは逆上して僕を殴ってきた。
僕は吹っ飛んだ。
「げほっげほっ...痛ってえ...」
呼吸がしづらかった。鈍い痛みが続いていた。
ふとヤンキーの方を見ると何かを持って振りかぶっていた。
(椅子...?)
「調子のんなグズがー!!!!」
勢いよく振りかざしてきた
僕は目を閉じた。
「危ないわ!」
彼女の声が聞こえた気がした。
そして鈍い音がした。
「あ、ああ....俺は悪くねぇ...」
僕を見てヤンキーが狼狽えている。
(どうしたんだ?急に?)
ヤンキーは教室から去っていった。
僕はよかった、と思い教室から立ち去ろうとした。
その時、重みを感じた。
なんだろう?と目をやると
頭から血を流していた彼女がいた。
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あれから色々とあった。
僕は彼女と暮らすようになっていた。
彼女は怪我のせいかあまり動けず、僕がついていなくちゃダメみたいだ。
だから僕は大学を辞めた。
僕は彼女を養うために働くことにしたのだ。
彼女は心配したけど、「彼女のためならなんだって出来るさ」と言うと彼女は照れた。
会社は、嫌な上司も居なくてとても居心地がいい場所だ。
先輩にも彼女の事を話すと「羨ましいなぁ、おい笑」って笑ってくれた。
僕の世界に色が付いたんだ。
彼女のおかげで僕は救われたんだ。
月日は流れ、僕は彼女にプロポーズをした。
彼女は顔を赤くしながら承諾してくれた。
少ない給料を貯めて買った小さな指輪でも彼女は喜んでくれた。
本当に彼女は優しい。
式はまだかかりそうだけど待ってくれる?と聞いたら
彼女はもちろん!と言ってくれた。
彼女が愛らしくなったのでキスをした。
翌朝。
彼女に行ってきますと告げて家から出たら隣の家のおばさんが、
「あなたの家なんか臭いわよ。」
と顔をしかめて言ってきた。
僕にはよくわからなかった。
「すみません、今日掃除しますね。」
とりあえずそう言っておいた。
「頼むわぁ~それじゃあね。」
とおばさんはいい、去っていった。
おばさんの背を見送って僕は会社に向かった。
夕方
仕事が終わり、家がもうすぐ見えるというところだった。
僕の家の前に坊主になったヤンキーがいた。
ヤンキーは僕を見つけるとこっちへ来た。
「今になってなんだが、謝りに来たんだ....い、今彼女は居るか?」
ヤンキーの声は震えていた。
「いるよ。呼んでこようか?」
と僕はいった。
「た、たのむぜ...」
僕は自分の家へ入った。
「ヤンキーが謝りに来たけど、会えないか?だって」
と、僕が尋ねると
「えぇ~...しょうがないなぁ...」
と、しぶしぶ許してくれた。
彼女を連れてきたらヤンキーは彼女の顔を見るとすぐに驚いて、
「う、うわああああああああああ」
と、叫びながら逃げ出していった。
「失礼ね!人の顔見て叫ぶだなんて。」
「ほんとな。反省したかと思ったんだけどな~。」
「とりあえず、部屋に戻ろっか!」
と、彼女が言うので
「そうだね」
と、言って彼女を部屋まで運んだ。
今晩はヤンキーと出会ったからか思い出話を彼女とした。
彼女を信じて良かったよ。と、いうと彼女は照れた。
そんな彼女が可愛かったので抱きしめた。
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翌朝、警察が僕の家に来た。
家の中にはいられ、彼女を連れ去っていった。
僕は必死に「彼女が何をしたんですか!」と抵抗をしたが、警察は聞く耳を持たなかった。
そして僕はなぜか精神病院に連れて行かれた。
わけがわからなかった。
看護師に彼女に合わせてくださいと頼んだ。
「無理です」
と言われた。
「なぜですか!?」
と聞いたら、
「彼女はもう死んでいます。」
と告げられた。
(警察が人を殺したのか?どうして?もしかして死刑?いやでも早すぎないか?)
僕の中でいろんな疑問が渦巻いている。
考え込んでいたら看護師が、
「現実を見てください、あなたの彼女はヤンキーさんに殴られた時に死んでいるんです。」
僕の世界が崩れる音がした。