今の俺を見て。
顔を上げるべきかどうか。芽衣の返事を聞きたい。恐いけど聞きたい。俺はまた振られるんだろうか。同じ女に三回も振られるんだろうか。
「もう、傷つきたくないの。この人しかいない、決めた!と思った相手に絶望した気持ち、わかる?絶望して、離婚したばかりなのよ?」
弱々しい芽衣の声に顔を上げると、目に入ったのは悲しみに満ちた目だった。
芽衣は、混乱していた。酔っ払って勝について行ってしまったこと。強引だったとはいえ、体を重ねてしまったこと。そして今、勝に告白されていること。
私ハ勝ヲドウ思ッテイルノ…?
元気にしているんだろうか、と気になってはいた。しかし、異性として見ていない。勝は、いつでも優しい。どんなにつれなくしても、自分を見ていてくれる。そんな自惚れさえ感じていた。
「もう傷つけたりしない。後悔させないから。」
勝はまた頭を下げる。
振られるんだろうかという不安。芽衣と今度こそやり直したい気持ち。
「今度こそ、後悔させないから!」
「…お願いだから、頭を上げて。」
「OKしてくれるまで上げない!」
「そんなこと言っても、絶対なんてあり得ないよ。今の私には、そんなことを信じる余裕なんてないの。」
「だからこそ、お願いします!」
「勝を異性として、恋愛対象として見られない。」
「俺は見てる!」
力なくリジェクトする芽衣と力強く食い下がる勝。
「お願いだから、傷口に塩を塗らないで。」
……もう帰ろう。
力なく立ち上がると、出口に向かう芽衣。
ドアに手をかけたときだった。勝が後ろから抱きしめた。
「行かないで。今の俺を見て。」
「離して。お願いだから。」
芽衣の頬を涙が伝い、勝の手の甲に落ちた。
「俺ってそんなに魅力ない?」
勝は手の力を緩めて訊く。
「今の私には何もジャッジできないよ…。」