表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
3/8

まだ一緒に居たい。

今日は日曜日なので少しゆっくりして自宅に戻る予定だった。なので、時間はある。芽衣がよければ、と言うより、どうしても、時間が許す限り一緒に過ごしたい。

「今日は時間ある?」

ソファに座っている芽衣に、おそるおそる聞いてみる。返事までの数秒が怖い。

「あるよ…。」

良かった。しかし俺の方をを見ない。怒っているのか?

「少し話したいんだ。」

「うん…。」


ホテルのカフェで一緒に朝食をとったが、パンケーキにも、ミルクティーにもほとんど手をつけず、うわの空。

「口に合わなかった?」

「そんなことないよ…。」

返事はするものの、ナイフとフォークを握る手は動かず。


「出ようか。」

「うん…。」


さて、どこで話そう。家だと、家族に会わせることになるので、外だな。カフェなんかだと誰かに会ってしまうかもしれない。やっぱり事務所がいいかな。今日は出勤するスタッフはいないはず。

チェックアウトを済ませると、芽衣を車に乗せて、事務所に向かった。


事務所までの約40分、俺と彼女は一言も言葉を交わさなかった。


「小さな事務所だけど。」

鍵を開けて、中へ案内すると、怪訝そうに足を踏み入れる。

「座ってて。」

ソファをすすめてから、キッチンでお湯を沸かす。冷たいジュースより、温かいコーヒーの方がいいだろう。

マグカップにドリップパックをセットしながら様子を伺う。ソファに座って、事務所の中をゆっくりと見回している。

「何を話そう…。」

ドリップパックにお湯を注ぎながら考える。一緒に居たくて引き留めたけど、考えがまとまっていない。いきなり、これからのことを話してもなあ。俺は良くても、彼女はどう思うだろう。


「コーヒーどうぞ。」

テーブルにマグカップを置いて、向かい合ってソファに腰かける。

「強引なことして、ごめん。」

涙ぐんで首を振る芽衣。

「酔っていたとはいえ、勝と、そんなことになるなんて思ってなくて…。」

「ごめん。」

本当は、もう少し一緒にいたかっただけだったけど、言い訳できない。こんなに傷つけてしまったなんて。

「別れてから、色々あったけど、ずっと芽衣のことが心のどこかにあって、でも結婚したの知ってたから、話せるだけでもいいと思ってた。」

「……。」

うつむいたまま、黙って聞いている芽衣。結局、言い訳してる俺。

情けねー。


どう言えば、いいんだ。

“三度も振らないでくれ”

“今の芽衣に一目惚れしたんだ”

“いい加減な気持ちで、あんなことしたわけじゃないから”

“後悔させないって約束する”

全部本当の気持ちだけど、どう言えばいいんだ。


「あのっ!昨日、久しぶりに会って、今の芽衣に一目惚れして、いい加減な気持ちじゃないし、こ、後悔させないから!」

一気に言ってしまった。今までのどんな試験よりも緊張した。


そしてソファから立って、びっくりしている芽衣の前で土下座しながら言った。

「俺と付き合ってください!」

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
よろしくお願いします。☆小説家になろう 勝手にランキング
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ