表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
2/8

朝まで。

「お前なあ、そこまで自分をかわいそうがってんじゃねーよ。芽衣だってしんどいんだぞ。気晴らしに遊ぶことだってできるのに、それをしないのは、お前に対する、あいつなりの礼儀だろうな。」

シャワーの音を聞きながら、一希先輩の言葉を思い出す。最初にフラれた数日後に言われた言葉だ。俺と別れた途端、周りの男どもがこぞって告白したが、芽衣は全部断ったらしい。

シャワーで、かなり酔いが覚めた。今、ベッドに行けば、芽衣と寝てしまうことは簡単だ。しかし、本当にそれでいいのか?


いや。俺は、決めたんだ。

しかし…。


「ここ、どこ?」

目を覚ました芽衣はキョロキョロと部屋を見回す。

勝とバーに行ったところまでは覚えているが、その後の記憶がない。ソファに目をやるとスーツのジャケットとネクタイが置いてある。

…もしかして、ここって、ホテル?あの音ってシャワー!

私って、勝とホテルにいるの?そういえば「泊まっていけよ」と言われたような…。服は乱れてない。よかった。コトは始まってなかったようだわ。とにかく帰らなくちゃ。

いそいとバッグをたぐり寄せ、ベッドの近くに投げ出されたようになったパンプスを履く。


フラフラとドアに近づこうと歩き出したとき、手前のバスルームのドアが開いた。

勝が腰にタオルを巻いて出てきたのだ。


固まる芽衣。

「目が覚めた?」

「あ、あの。ご迷惑おかけしたようで…。か、帰りま~す。」

本人は必死に歩いているつもりたが、フラフラしていて危なっかしい。…と、早速躓いた。

「わっ!」

「ほら、危ない!」

反射的に勝が抱きとめるとタオルがバサッと落ちた。


全裸で芽衣を抱きしめる形になってしまった勝。心は迷っていても、体は迷っていない。

固まったままの芽衣を抱きしめて、唇を重ねる。ひょいと抱き上げてベッドに乗せる。

「勝?」

起き上がろうとする彼女を押し倒して、また唇を重ねる。彼女の素肌を手で確かめる。

怯える彼女を抱きしめる。最初から、こうしていればよかったんだ。

「やり直そう。長い空白の分まで。」

無我夢中で彼女を抱いた。怯えていても、俺には止められなかった。

そのまま、朝まで抱きしめていた。強引に抱いて、泣かせてしまったから。

「後悔させないから。」

逃げ出すわけでもなく胸の中でしゃくり上げる彼女は、とても華奢で弱々しくて、別人だった。



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
よろしくお願いします。☆小説家になろう 勝手にランキング
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ