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書いたそばからあげるんじゃい!
祭りじゃ〜
俺がこの世界に来てから3年が過ぎた。
そして俺は最初に転移された森から全く移動していなかった。
俺の前世の夢――――――忍者修行の真っ最中だったからだ。
拠点は適当な崖の中腹に土魔法を使って作った。
今の俺はこの森にいるブラックベアーの毛皮を使った黒い忍び装束(自作)を身に着けて木々の間を飛び回っている。
「今日の飯はーお、あいつにしよう」
目の前には豚型の魔物。こいつがうまいんだよな。
俺は上からそっと近づくと印を結んで、忍術名を呟く。
「風遁:風刃」
魔法名で言えば所謂ウィンドカッターということになる。
俺は魔法を忍術として扱うことによって自分の夢をかなえたのだ。
出現した風の刃はまっすぐ進み、豚の頭を切り落とした。
血抜きをして獲物を肩に担ぐ。
空間魔法はアイテムボックスっぽいけどそうではなかったので中には入れたくない。
意気揚々と帰宅しようとしていると東のほうから何かが争う音が聞こえてきた。
「なんだ?」
この三年間、俺は誰一人この世界の人とは会わなかった。
そしてこの森に人が入ってくるようなこともなかった。
「召喚:衣服」
その瞬間俺の忍び装束は普通の麻の服になり、木になった俺は音の出る方角へと急いだ。
◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆
「旦那様!ここは我々が食い止めます!早くお逃げを!」
俺がその現場に着くと盗賊らしき人たちになんか豪華そうな馬車が襲われていた。
「アレ盗賊じゃねぇな」
豪華な馬車側の隊長が何か叫んでいたが盗賊っぽい人側は完全に訓練された動きで囲み、逃がさない。
おそらくどこかにこの人たちの殺害を依頼された人たちだろう。
こんなものを見てしまって助けなかった時にはかなり音目覚めが悪い。
「はぁ仕方ないか」
俺は印を結んで忍術の準備をする。
「誰だ!」
魔力が高まったのを察知したのか豪華側の隊長が叫ぶ。
俺はそれに応えることはせずに忍術を使う。
「火遁:火槍山」
俺が唱えた忍術(魔法)は地面から火の槍を生やして盗賊を貫いた。
「なっ!?」
なんか驚いている人がいるけど気にしない。
俺は隠れていた茂みから出ていく。
「誰だ!」
いきなり剣を向けられてビクッとしてしまった。
実際剣を向けられたのとかこれが初めてだし。
「あ…う…」
全然思ったことをしゃべれない!剣を向けられて俺は軽くパニックになってしまった。
「待ちなさい。その子は多分敵ではないぞ」
「しかし…」
「そんな剣を向けられて怯える子が私たちを襲えるはずがない」
急に馬車から出てきた結構いい布の服を着た貴族っぽい人が隊長を諌めてくれた。
よかった…。
周りを見ると怪我をしてる人がいるので、俺が印を結ぼうとするとまた剣を向けられた。
「け、が…なお、す」
剣を向けられてやはりパニックになってしまう。「彼は怪我を治してくれると言っているぞ」
「すまんな坊主。さっきあんなことが合ったばっかりでな」
「い、いえ…」
こう話しているときにそう言えば、と思い出した。
これ人前で忍術使ったらダメなやつじゃないか?
どう考えても忍んでないので仕方なく忍術ではなく魔法を使うことにした。
そのためには詠唱を思い出さなければいけない。
無詠唱は使い手が少ないって『異世界の歩き方』に書いてあった。
「我癒しを願う者、聖なる光を───…」
気を取り直して詠唱を始めてみたが先を忘れてしまった。
薬の類いは持ち合わせでは全然足りない。
「どうしたのだね?」
なんか偉いっぽい人に聞かれたけど、詠唱を忘れましたとは言えない。
「い、いえ大丈夫です。《エリアヒール》」
もう本当に仕方なく無詠唱でやった。
仕方ないよね。人が死ぬよりマシだ。
「なっ!?」
ごめんなさい。テンプレで驚いているところ申し訳ないけど、最初印を結ばずに〜遁っと唱えるのに必要だったんです…。
印が出来てからはしなくなったけど。
「君は一体…?いや、こんなことを聞くのは失礼だね。忘れてくれ」
うわぁ貴族っぽい人ええ人や…。
何か訳があるのかと思って気遣ってくれたのか。
別に何もないから大丈夫ですけど。
「いえ。僕は特に訳ありとか言うわけではなく、只修行の身と言うことでこの森で3年くらい修行しているだけですのでお気遣いなく。申し遅れました、僕は────タナカ・タロウです」
パンパカパーン
名乗った瞬間頭に響くファンファーレ。
『この世界での名前を認識しました。』
あぁ…。そう言えばこの世界に来てステータスを開いたとき名前の欄が空欄になっていたのはそう言うわけか。
「さ、3年だと?この迷いの森で?」
隊長各の人が何か言ってるけど気にしない。
「そ、そうだったのか。では改めてありがとう、私たちの命の恩人よ。私はサターム・ハルトビニ・ロドムだ。そして助けてもらっておいてすまないのだが、お願いをしてもいいだろうか」
お願い?偉い人が態々俺に?
「僕にできることであれば」
「見ての通り我々の護衛は皆疲弊している。我々の護衛に加わっては貰えないだろうか?」
「え?」
「勿論報酬は出そう。どうかな?」
確かにこの誘いは魅力的だ。
この人偉いっぽいし。しかし────
「申し訳ありません。護衛隊に加わるのは不可能です」
「残念だ。しかし理由を聞いても良いかね?」
残念だといいつつあんまり残念そうじゃないなこの人。
ダメ元ってことか。
「僕はまだまだ半人前で修行中の身。修行を途中で放り出すことはできません。後一年は修行がありますので」
ついでに忍は目立っちゃ駄目だし。
「まだ半人前か…。すまなかったね。初対面で妙なお願いをしてしまって。では一年後にまた護衛を頼むとしよう」
「一年後に、ですか?」
「ああ。我々は毎年この時期に仕事でここを通るのだよ」「分かりました。その時は喜んでお引き受け致します。では一年後に僕と連絡が取れるように魔道具を渡します」
俺は懐に手を入れる振りをしてアイテムボックスを開き、中から半紙と筆を取り出した。
「それは?」
「連絡と守護の魔道具です」
俺は半紙に呪文を日本語で書き、それを渡した。
「では一年後に会おう」
そして異世界に来て初めての人との解逅が終わった。
変なところあったらおせーてください。
あっTwitterやってます。
yasuhira_7
です良ければ
軽めな生存報告がおもやと思います