冒険の種
いろいろ言いたいことがあったが、真面目に諭されて、自分がこの世界では平均以下のガキの体格だってことを思い出して引き下がることにした。
ガキだから攫われるって意味なら当てはまっちまうしな。
オルはともかく、船長や他の船員になら軽々と担がれちまうし。
実際、あっさり誘拐されたりもしたしなあ。
「そっか?そんな顔が何かわかんねえけど、気をつけるわ。」
納得しない、したくないが、オルの顔は真剣だ。
心から俺を心配してるのがわかるから、その忠告はありがたく聞いておく。
もしかしたら、オルと一緒の時に誘拐されちまったのに、責任を感じてるのかもしれねぇ。
あの時は多勢に無勢だったし、魔法まで使われてどうしようもなかったんだから、気にしなくていいのにな。
「サイ、ちょっと来い。」
そんなちょっと気を遣う場面でも変わらないのが船長だ。
はいはい。今度は何でしょ?
「この部屋にこれを起動する仕掛けがあるはずだ。探せ。」
「仕掛けですか?…どんな?」
「それを探すのがお前の仕事だ。」
船長の首を引き寄せられて、新しい命令を授かる。
くっ。無駄にいい声ってのは、こういう時凶器だよな。
耳元でささやくの止めてくんねーかな。男でも腰にくるわ。
ちくしょう。イケメンめ。
まあ、とにかく、船長の命令は絶対だ。
探すだけ探してみるか。
スイッチねえ。
普通、スイッチって言ったら壁にあるもんだけどなあ。
そうそう壁のちょっと出っ張ってる岩みたいな…。
ン?下から上に動くぞ。これ。
「あ、あの。船長。」
「ん?見つけたか。」
「いや。まだわかりませんけど、これ動きます。」
「何、何?サイ、ちょっと見せてね。」
「ああ。オル。下から上に動くんだ。中は見てない。」
「OK。下がっててね。」
見付けたことを船長に報告し、オルに任せて後ろに下がる。
しばらく調べたと思ったら、目を輝かせて振り向いた。
「船長。これ、魔力を流して起動させるみたいだ。試していいかな?」
「いいぞ。責任者の部屋に罠もないだろしな。」
そりゃそうだな。
あの石のランドセルからして、ここの責任者の部屋みたいだし、自分の部屋におかしな装置はつけないだろう。
船長の許可を経て、オルが仕掛けを起動させると、天井の模様がふわりと光り出した。
その幻想的な光景に見入っていると、ぱらぱらと何かが落ちてくる。
「いて。いてて。…これ、輝石か?」
「みたいだな。」
船長。さっさと壁際に避難してやんの。
こういうことなら、教えといてくださいよ。
手の平に落ちてきた石は、小さいながらもキラキラしてとても綺麗だった。
いびつだけど、丸っこくて、色とりどりなのはまるで雛あられだ。
にしても、これってひまわり真ん中から出て来てるよな?
ひまわりの種ってことか?大量。大量。




