冒険の花
感心して視線を下に戻すと、床にも同じ模様があるのに気づく。
さっきまで人が多かったから見えなかったんだな。
これも何でひまわりなんだろうなあ。
アサイー帝の好きな花だったとかか?
「ひまわりなら種があるんだけどなあ。」
「今、何つった?」
「ふへ?」
ポツリとつぶやいた言葉を船長が拾う。
いや、何て言ったって言われても。
「さっき言ったやつだ。サイ。」
「え。あ~。この花、ひまわりってのに似てるんです。その花なら、真ん中のとこに種が出来るんです。たくさん。」
「取れるのか?」
?そりゃひまわりだし?
種がびっしり生えてるのはちょっと気持ちわりいけど、ちゃんと育った種なら取れるよな。
「ええ、熟成した種なら。ぽろぽろ取れます。けど?」
「はっ。そうか。」
俺の答えに満足したのか、船長が愉快そうに笑う。
どうみても獲物を屠る直前の猛獣の笑みに見えるのは内緒だ。
いや、だから口に出してないのに、何でわかるんですか。船長。
いででで。頭に乗せた手に力入れないで下さいって。
あんた握力すげえんだから。
いでで。誰か助けて~。
「船長。それ以上はサイの頭が持たないよ。お宝見つけそびれてもいいの?」
オルの言葉で解放される。
ああ、いてえ。ジンジンするんだけど、俺の頭、凹んでねえよな?
オルが見てくれたが、大丈夫だったらしく「よかったね。」と頭を撫でてくれる。
オルの優しさが身に染みる。
何だか撫でてもらったところから、痛みが取れていくみたいだ。
…てか、マジで痛みが取れてねえ?
確かにオルは船医だけどよ。
今のは医術とは関係ないよな?
「治ったかな?これくらいなら、ここでも治療出来るけど、あまり酷いと無理だから、適当な所で逃げるようにね。サイ、なんでも顔に出過ぎだよ。」
ここでもって、じゃあ、これ魔法か?
治療魔法?すげえ
まあ、チートが実在する世界なら、そういうのもありだよな。
とりあえず、治してもらったことに礼を言おう。
「ありがとう。オル。」
「うん。良かった。でも、その顔、よその人に見せたらだめだよ?サイ。攫われちゃうよ?」
どんな顔だよ。
ていうか、誰が俺なんか攫うんだっつうの。平凡ヒョロ男だぞ?




