冒険の隠し部屋
オルはしばらく壁を探っていたと思ったら、下の方に手を差し込んだ。
すると、ゴゴゴッという大きな音と地響きがして、壁だった場所がゆっくりと回転しだした。
「おー。さすがオル。」
「ええっ。回った?」
驚く俺と対照的にヤジスさんは落ち着いている。
まるでこうなるってわかってたみたいだ。
オルってすげえな。
ただの船医じゃなかったわけだ。
にしても、この隠し扉。回転式なんだな。
横や上にスライドするのかと思ったんだけど、真ん中を軸に左回りに回転しただけだ。
忍者屋敷の洞窟バージョンか?
こっちの方が仕掛けが簡単ってだけかもしんねえけど。
オルが戻ってきてヤジスさんと交代する。
隠し部屋にも罠があるかもしれないんだそうだ。
絶対、勝手に移動しないようにしよう。
下手に動くとマジで死ぬ。
「ん~。こっちは無いなあ。つうか、ちっちぇえのは幾つか散らばってんなあ。ラッキーってか?」
「周りに罠とかはないんだ?じゃあ、ラッキーだね。」
「周りって?」
「散らばってる輝石の周りさ。それが罠で、さらに奥に本当の宝箱があったりするの。」
「うへえ。」
「そうそう。だから、今回はラッキーってこと。んじゃ、船長呼びに行ってくるわ。」
戻ってきたヤジスさんはそう言って部屋の外に向かう。
オルに促されて同じく外に出る。
船長を呼びに行こうと思ったら、松明が必要だ。
でも、松明はこの部屋の鍵になってるから、取ったら扉がしまっちまう。
すると、部屋の中の仕掛けなんかが動く場合があるらしくて、危険なのだそうだ。
リアルな探検怖すぎる。マジ船で待ってたいんですけど。
「んじゃ、そこで待っててくれ。」
「よろしく。」
「お~。」
長い松明をしっかり持って、ヤジスさんが危なげなく進んでいく。
すげえなあ。俺だとあんなに早く進めねえよ。
暗くなったけど、周りは光る罠で埋め尽くされてるから真っ暗ってわけじゃない。
罠だって思わなきゃ、何かのアトラクションかと思う光景だ。
「にしても、サイは今回大手柄だね。」
「?手柄?」
「普通、ここまで順調じゃないんだよ。扉が開かなかったり、そもそも入口が見つからなかったりするものなんだ。」
へえ。だから手柄ねえ。
つっても全部偶然見つけたんだけど。
「ん~。よくわかんねえ。たまたまだしなあ。」
「サイはそう言うけどね。そのたまたまを起こせるのがすごいんだよ。船長の言った通り、サイはここと縁があるんだと思う。」
「そう?」
「そうだよ。そういうところもサイらしいけどね。この先、いくつか遺跡を経験すればわかるよ。」
ん~。やっぱわかんねえ。
経験積めばわかんのかな?
役に立てるのは嬉しいんだけどな。皆褒めてくれたし。
でも、それが偶然の産物じゃあ、手柄とまでは思えねえよ。
調子に乗ったら船長にシメられそうだしな。
自分には厳しいくらいの評価で丁度いいと思ってる。
たぶん、オルは周りからの評価もちゃんと知っとけってことを言いたいんだろう。
それはそれでありがたい忠告だ。うなずいておこう。




