冒険の扉、再び
それで、今度はヤジスさんにオルも加わって、先行部隊で先に行くことになった。
船長たちはいつも通り少し離れて付いてくる。
先頭で松明を持つのはもちろん俺だ。
俺が扉開いたんだし、俺が先頭で進むのが一番いい。
「慎重に勧めよ。さっきは大丈夫でも次も無事とは限らねえ。」
船長が出発前の俺に釘をさす。
これはたぶん赤は踏むなってことだろう。
俺が大丈夫でも他が大丈夫かわからないしな。
船長としては自分の仮説が証明されただけで今回は十分ってことだ。
「はい。」
首だけ振り返って船長に返事をする。
船長が頷いたのを確認して、ゆっくりと出発することにした。
行きみたいにほいほい進めるわけじゃないから慎重に進まないとな。
後ろのヤジスさんはともかく、ここが初めてのオルには注意を呼びかけるようにしよう。
「サイは前と手元と足元だけ見ててね。俺は勝手についていくから。」
「そうそう。先行部隊の先輩だからな。どんと任せておけよ。」
「ずいぶん久しぶりだけどね。」
へ?オルって船医じゃなかったのか?
久しぶりって言ってるから、かなり前のことみたいだ。
でも、これで納得だ。
先行部隊にオルもいれらるわけだよ。
てっきり小柄だからだと思ってた。
そんなわけないよな。だったら、船長はオルにだって「行け。」って言ってたはずだ。
…けして、俺の扱いが軽いとかじゃあないぞ。
うん。これ以上は俺の心に良くないな。やめとこう。
「わかりました。じゃあ、進むことに専念します。」
「そうして。」
「よろしく。」
そんなやり取りがあって、俺は前に進むことだけに専念した。
途中から赤の罠が増えてくるが、俺たちに問題はなかった。
初めてのはずのオルはヤジスさんに注意を受けながらも危なげなく進んでいく。
身が軽いんだよな。さすが元先行部隊。
でも、さすがに扉の前の足の踏み場もない状態になると、困ったようだ。
「うわぁ。これが罠だらけってやつか。ホントに足の踏み場もないね。」
「なあ。こんなのよく作ったよな。当時の奴らはどうしてたのかねえ。」
どかどか踏んでたと思います。赤いところを。
何て言えねえよな。当時の連中の身体の大きさでもわかればなあ。
まあ、今後はその辺を船長が調べんだろう。
俺の考えることは、罠をさけつつ扉をもう一度開けて船長を待つことだ。
「じゃあ、松明置きます。」
「うん。」
「おっし。楽しみ。」
俺が松明を置くと、扉が再び開いて行った。
俺の後ろでヤジスさんとオルが「おお~。」と歓声をあげている。
やっぱテンション上がるよな。
こういうのってワクワクするぜ。




