冒険の扉の秘密
戻って中が空だったことを報告すると、船長以外は「あ~。やっぱり。」って顔をしてた。
手つかずの採掘場の場合、掘りつくして放棄した例もあって、その場合は輝石はまったく見つからなかったりするらしい。
でも、壁にでっかい花が彫られてたことを話すと、船長が食いついてきた。
あのひまわりに何かあるのか?
「えっと。丸くて、その周りに花びらがたくさんあって、そんで、手を広げるような形で葉っぱがありました。」
松明をヤジスさんに渡して、身振り手振りで説明する。
すると、船長以外の皆も顔色を変えた。
「ビンギス帝国か…。」
「あらぁ~。じゃあ、隠し部屋ねぇ。」
隠し部屋?
じゃあ、あの部屋の奥にまた部屋があるのか?
「扉の仕掛けといい、あるだろうな。」
「はあ~。さすがサイ。いいもん引き当ててくれるわ。」
「ホントに縁があるね。扉が開いたのも偶然だなんて。」
皆がよくやったって顔で俺を見る。
でも、偶然だしなあ。中入らずに戻ってきたし。
「こうなると中に入らなかったのは正解ねぇ。」
「仕掛けに引っかかったかもな。」
副船長と船長がしみじみと話す。
仕掛けに引っかかる?
へ?罠って光るんじゃねえの?
首を傾げた俺にヤジスさんが理由を教えてくれた。
「暗けりゃ罠も光ってわかるけどな。あの光は弱いから、明るい部屋じゃほとんどわからないんだよ。中が良く見えたんだろ?」
「部屋の隅々まで見えました。」
「じゃ、部屋の明かりでかき消されてただろうな。」
うわ。あぶねぇ。
興味本位で入ってたら死んでたかもってことか?
戻って良かった~。
俺、ぐっじょぶ。
「戻ってくれて良かったよ。」
「ホント、ホント。その慎重な性格、まさに先行部隊向きだわ。」
オルとヤジスさんが俺の判断を褒めてくれる。
いや、勝手に入ったら怒られるかなって思っただけなんだけどな。
ま、いいか。おかげで無事だったし。
そんな俺の頭を船長が再度がしりとつかむ。
「サイ。他はどうだった?」
「…何もありませんでした。」
「何もか?」
「はい。扉が開いた以外、何も「起こりません」でした。」
俺の答えに満足したのか、そのまま手は離れていく。
今のでちゃんと伝わったみたいだ。
赤い罠は反応しなかったってことが。
周りには全部言えないからこんな方法とったけど、意外と伝わるもんだな。
…違うか。船長が頭いいからだな。うん。
今睨まれたから変えたわけじゃないぞ。絶対。




