冒険に再挑戦
結局、船で一泊して、次の朝に出発ということになった。
船長はいろいろ指示を飛ばしていたが、始終、エサを目の前にした猛獣みたいな顔だった。怖ええ。
「サイっ。今日はお前が先頭行け。」
「はいっ。…って、うえええ?」
条件反射で返事をして、のけぞりそうになる。
いやだって、可笑しいだろ?何で俺?
「ああ?お前ぇ、先行部隊ろうが。」
「船長ぉ~。さすがにこいつを先頭は…。」
「いや。その方がいい。こいつなら抜けられるはずだ。」
さすがにヤジスさんも船長に意見しようとしたが、船長は妙にきっぱりと俺を先頭に押した。
俺なら抜けられる?穴かなんか通んのか?
まあ、驚きはしたが、船長命令だ。
素直にしたがいますよ。
「はあ。んじゃ、サイ、これ持ちな。」
「はい。とと。軽いけど、身体が真っ直ぐじゃないと歩きにくいですね。」
「長いからな。気いつけろよ?そいつが触れても罠は作動するからな。」
ヤジスさんから先頭の人間が持つ長い松明を渡され、思ったより軽いのと重心が取りずらいのとに驚いた。
ついでに注意も受けたが、気をつけられるかわからない。
正直、松明持ってると、そのことに意識がいってしまって足元がおろそかになる。
何で船長は俺に先頭行けって言ったんだろう。
「サイ。」
「っ。はいっ。」
だあ!腰にくる美声で後ろからささやかんで下さいよ船長!
言えねえけどな!松明落とすかと思ったわ。
「ヘマやったらぶっ殺す。」
「…はい。」
え。これ死亡フラグ?
マジか。泣くぞ。ちくしょう。
「あんまり脅さないでよ。船長。サイ。ゆっくりでいいからちゃんと周りも見て歩くんだよ?君が先頭に向いてるっていうのは確かだから。」
俺が?何でだ。
こういうのって、経験の多いひと程優遇されるもんだと思ってたけど。
「そおよぉ。船長の勘は当るんだからぁ。」
勘かよっ。
副船長に内心でつっこみつつ、素直に「はい。」と言って洞窟の中に入っていく。
俺の後ろはヤジスさんと何故かオルだった。
これも船長の勘ってやつか?
それなら、どうか今回もその勘が当りますように。
死亡フラグは当らんでいいが。




