安全…らしい
「反応ねえな?」
「ばかねぇ。固まってるのよぉ。目を真ん丸に見開いてるじゃない。」
「船長…どうして言うんです?もう少し落ち着いてからでいいでしょうに。」
「嫌なことはまとめて来た方が後々楽だからな。正気に返ってからじゃ返って辛れえだろ。」
「まあ、そうよねぇ。奴隷船よりはマシだと思うけど、良い船ってわけでもないもんねぇ。」
「はあ。大丈夫かい?ごめんね。そういうわけで、ここは海賊船なんだ。君に悪さしようとする人はいないから、それだけは安心して?」
やっと機能し始めた俺の耳に銀髪の言葉が入ってくる。
安心しろって言われても、海賊船だしなあ。
海賊の冒険話は好きだけど、海賊になりたいわけじゃない。
もう19だしな。現実は見えてる。
どう考えても危険しかねえ…。
詰んだか?
「安心しろ。わざわざ助けたんだ。簡単に死なせたりしねえよ。」
「それじゃあ、全然安心出来ないじゃない。大丈夫よぉ。この船には子供に手を挙げるような下種は乗せてないから。坊やに危険はないわ。」
「医者の僕がそんなことさせないからっ。それは安心していいよ。」
三人が口ぐちに大丈夫だと言ってくる。
本当かよ?でも、溺れてるとこ助けてもらったしな。
たしか、溺れてる人間助けんのってすげえ大変なんだよな?
それをわざわざ助けてくれたんだ。
金髪の言う通り、簡単に死なすってことはねえだろ。
ここが異世界なら、他に保護してくれる場所もないし、世話になるか。
「えっと…よろしくお願いします。」
「あら、かわいいっ。」
「礼儀正しいね。やっぱりどこかの…。」
「ん~。おめえ、行くとこは?」
「ありません。」
「…帰るところはぁ?」
「ありません。」
「即答かよ。」
「訳ありねぇ。やっぱり奴隷船にいたんじゃない?」
「そうかもしれないけど、それにしては身なりもいいし、言葉遣いもしっかりし過ぎてるよ。」
「あるだろ。この色じゃ。」
そう言って金髪が俺の髪をつかむ。
今度は引っ張られたりしなかった。
まるで手触りを確かめられてるみたいだ。
でもキモい感じはしないな。
「手入れも行き届いてる。奴隷なら、間違いなく高級奴隷だ。」
「成る程ねぇ。でも、ここら辺で奴隷船なんて影も形も見てないわよ?」
「じゃあ、この子はどこから?」
金髪が俺の髪から手を離して言う。
誰が奴隷だ。でも言えねえ。目が怖いんだって。
俺の身元が怪しまれてる。
どうしたもんか。