冒険の別れ道
しばらく進むと別れ道に出た。
どちらも同じくらいの広さの通路で、どちらも通路は曲がって伸びているようだった。
先に決めてあった通り、別れ道の前で船長を待つ。
程なくして船長たちが到着した。
「あ~。奥に行くにはまた右なんだがなあ。」
「あらぁ。左に何かあるのぉ?」
「罠がこの辺すげえ多いのと関係してます?」
船長に副船長とヤジスさんが声をかける。
何だか船長は左を睨んでいる。何かあんのかな?
「ああ。罠は多いだろうな。時代的にこの辺に輝石置き場があったはずなんだよ。」
「あらっ。」
「へええ。さすが、よく知ってますね。」
副船長とヤジスさんが口ぐちに褒めると、ますます不機嫌そうに左の通路を睨みつける。
すげえ怖いんですけど。洞窟の中だからどなったりしねえ分、余計怖いっつーの。
「…こないだコーネルの奴に借りた本に丁度載ってた。ちっ。気にくわねえ。」
「まあまあ、ラッキーだったってことでいいじゃない。手つかずなら、輝石の欠片くらい落ちてるかもよぉ。」
「あの、輝石って何ですか?」
悪化していく船長の機嫌を逸らすために、無邪気に質問してみる。
これで以外と人に物を教えるのが好きな人だからな。少しは気がまぎれるだろ。
まあ、ワクワクしてるのも本当で、「輝石」ってのが何か知りたいのも嘘じゃない。
ちょっとくらい口を出したっていいだろ。
「あ?…ああ。輝石っつうのは魔石に混じって採れる色のついた石のことだ。宝飾に使われるから、欠片でも結構な値がつく。」
「宝石の原石ってことですか?」
「そうよぉ。サイちゃん、よく知ってるのね?」
「石の加工を見たことあるんで。宝石もそういう風に綺麗になるって、お袋に教わりました。」
「石の加工?親は海の仕事だろ?」
「ええ。でも、実家の近くに墓石の工房があったんで。故郷の墓は顔が映るくらい磨いた石を置くんです。だから、石を磨くときれいに光るっていうのは知ってました。」
俺が石の知識を得た経緯を示すと、皆不思議そうな顔をして聞いていた。
まあ、顔が映るくらい磨いた石を乗せるなんて、外国でもあまり聞いたことないしな。珍しい話だろ。
「成る程なあ。サイ。おめえ、それ、故郷のことは外で話すなよ。命令だ。」
「は、はい。」
「そうねぇ。サイちゃんがいろいろ知ってるって知られると危ないわぁ。」
危ないって、さっきの豆知識か?
豆と呼ぶのもおこがましい、常識に近いもんなんだが。
まあでも、船長命令だ。
平の船員は従うまでだ。




