冒険に出発
そんな話を船長たちとしてたら、あっという間に島についた。
ま、小舟でいける距離に停めてたしな。
崖の上に板を渡して上陸すると、地面に杭を打ちつけて縄梯子を降ろす。
これで洞窟の入口に行くってわけだ。
「おーしっ。野郎ども。用意はいいか?」
「「「おおおっ。」」」
おお。海賊っぽい。
忘れそうになってたけど、この人たちって海賊だったんだっけ。
普段は気のいいおじさん・お兄さんなのにな。
「さあ、サイ。俺らは先に出るぞ。」
そんな風に感心してると、ヤジスさんに声をかけられる。
え。俺、船長に引っ付いてんじゃねえんだ。聞いてねえけど。
「俺もですか?」
「あー。言ってなかったか。俺らは基本「先行部隊」なの。だから情報も探りに行くし、誰より先に現地に到着するってわけ。」
ああ。成る程。
だから、罠とかないか先に見に行くってわけね。
「…それって危なくないですか?」
「だーいじょーぶっ。サイならいけるっ。」
「適当に言ってますよね!?」
明らかに適当だとわかる返事を言いつつ、ヤジスさんが俺を引きずって行く。
や。船長の命令ですから、ついて行きますけどね。
ちょ。逃げねえから、襟首つかむのやーめーてー。
締まる締まる。
腕をタップしたら離してもらえた。げほっ。
咳き込みつつも縄梯子をおっかなびっくり降りると、そこはかがんでやっと通れるくらいの穴があった。
足場になる部分があって、これが俺が下から見た出っ張りだろう。
ヤジスさんに続いてかがみながら中に入る。
中はすぐに広くなって、大人の男が悠々と歩ける広さがあった。
はあ~。マジで洞窟になってるよ。鳥の巣だとばっかり思ってたのに。
ヤジスさんは長い松明を持って、先に掲げながらゆっくりと進んでいく。
ずいぶん長い松明だな。ランプじゃないのは意外だ。
「サイ。松明の先の変化は見逃すなよ。揺れたり消えたりしたら、普通じゃねえってことだから。」
ヤジスさんの説明に納得する。
成る程。あの松明は異常を察知するためのものなんだな。
変なガスが出てたりすれば炎がおかしくなるってわけだ。
「ガスが出てるってことですね?」
「おお、そうだ。後、隠し部屋や通路があったりな。」
あ~。空気の流れがあれば、違う場所があるってことだもんな。
酸欠防止とかにも役にたちそうだ。
「成る程。そのために長いんすね。」
「そうそう。危ない生き物がいても、距離があれば対処できるだろ?」
「ああ。確かに。」
いろんな使い方があるみたいだ。
冒険ってのはただ進めばいいってんじゃないんだな。
この辺はゲームと違うな。当たり前だけど。
そんなことを思いながら進んでいくとすぐに壁にぶち当たった。
「…ここだ。ここまではいいんだよな。」
ヤジスさんがため息を付きながら松明をかざしたそこには、俺の腰よりちょっと高いくらいの場所に月の形のくぼみがあった。
これが扉?壁じゃねえの?




