冒険の舞台・運も実力のうち
俺の新しい所属が決まると、船はにわかに騒がしくなる。
ま、当たり前だよな。冒険が始まるんだ。
俺だってわくわくしてる。
船長のエール運びながらだけどな。
船に戻ったらさっそく雑用を言いつけられたんだよ。
ったく。相変わらず、人使いが荒いぜ。
船長室には副船長と船医がいた。
おやっさんは皆の食糧の支度をしてるから、動ける幹部は全員揃ったってことだ。
「エールです。」
エールを差し出すと、船長が一気に飲む。
いつもはちびちび飲んでるのに珍しいな。
「うふふ。サイちゃん。本当にご苦労様。おかげで船長も上機嫌よぉ。」
「ほんと、助かったよ。停泊しすぎると食料も薬も足りなくなっちゃうからね。今回は情報が少なすぎたし、数日はかかるかと思ってたよ。」
どうやら、洞窟の入り口を見つけたことを言ってるらしい。
俺の手柄じゃねえんだけどな。
「はあ…。」
「何だ?気のねえ返事だな?」
「ホントに偶然だったものですから。イマイチ役に立てた実感が無くて。」
俺のなんとも言えない返事を聞きとがめた船長が追及してくる。
同じことの繰り返しになるとわかってても、俺は素直な気持ちを話した。
だって、マジで偶然なんだぜ?
俺、白い鳥としかわかんなくて、それをたまたま見ただけなんだ。
「それだけおめえがこいつに縁があるってこった。」
そんな俺に船長が例の月の魔石を見せながら言う。
確かにそれを見つけたのは俺ですけどね?
「そうよぉ。こういう宝さがしにはねぇ。運が大事なんだからぁ。」
「そうそう。どんなにいい情報持ってたって、お宝が手に入る前に奪われちゃってたりすることもあるし。」
「無傷の鍵なんて大層なもん見つけて来たんだ。よっぽど呼ばれてんだろうな。」
口ぐちに船長たちにとって根拠になることを述べていく。
どうやら俺の認識と船長たちの認識はだいぶ違うみたいだ。
たしかに、遥か昔のお宝探すんだ。
運ってやつがないとどうしようもないってのはわかる気がする。
…役に立てたのかな。俺でも。
そんな風に思えてきて、なんだか無性にうれしくなる。
「…役に立てたなら嬉しいです。」
「…可愛いわぁ。」
「船長、これ街中に放っていいの?危なくない?」
「だから、二人以上つう条件付けたんだよ。」
俺が素直に喜んだら、船長たちが失礼なことを言い始める。
可愛いって、俺、成人男子なんですけど。




