冒険の舞台・調査の報告
待つこと10分程。
以外と早くヤジスさんは帰ってきた。
「中に門あったぜ。最初壁かと思ったけど、月の形のくぼみがあった。」
「おお~。当たりか。」
「やった。」
吉報に沸き立つ。
これで船長に良い報告が出来る。
蹴られなくて済む。ううっ。
俺が涙ぐんで喜んでると、ヤジスさんが察してくれて「良かったなあ。ホントに。」と肩を叩いて一緒に喜んでくれた。
そっからは周囲に座礁がないか、船をつけるのに問題がないか丁寧に調べ、俺がまたグロッキーになりながら船に戻った。
おやっさんの水は途中で無くなった。次はもっとたくさん用意してもらおう。
「「「ただいま戻りました。船長。」」」
「おう。その面ぁ、上手くいったか。」
「ええ。サイがやりましたよ。洞窟の入り口見つけて、調べたらドンピシャでした。」
「あらぁ。やったわねぇ。サイちゃん。」
「やっぱり縁があるんだね。」
「いえ。あの、たまたまで…。」
あまりに褒められるものだから、思わず否定してしまう。
だって、俺だけだったら白い鳥が洞窟カモメだってわかんなかったし、あの崖も登れなかっただろう。
あれは本当に偶然だったからな。
自慢できねえよ。
「そのたまたまがすげえんだよ。お前が飛び立った洞窟カモメを見つけなきゃ、俺らはまだあそこにへばり付いていたんだぜっ。」
そう言いながらミランさんが首に太い腕を巻きつけてくる。
ちょっ。締まる締まるっ。ギブギブ。
「サイ。お前、そんな目が良かったか?」
「そうですよ。船長。こいつ波間に埋もれた岩も見分けられるみたいで。結構使えますよ。」
「いや。俺、カモメは白い鳥としかわかんなかったっすよ。カモメだって判断したのはミランさんです。」
「飛び立つとこを見つけんのがすげえんだよ。どんな鳥かなんてそのうち覚えるって。」
「ってえことは、そこまではっきりとは見えねえんだな?」
「はい。何となく色と形がわかるくらいです。岩は望遠鏡を借りたのでわかりました。」
ミランさんに頭をぐりぐりされながら船長の質問に答える。
何かあるのに気づいても、それが何なのかわかんねえんじゃ意味がない。
何よりもう小舟に乗るのは御免こうむる。
俺は必死に偵察に使えないことを証明しようとした。
だが、俺の健闘むなしく、非情な命令が下される。
「ふん。望遠鏡使ってわかんなら充分だろ。お前、これからヤジスの下につけ。そろそろ他の仕事も覚えさせねえとな。」
「お。いいんですか?」
「普段は俺のとこにいさせる。外に出るときは連れてけ。ただし、二人はつけろよ。こいつは狙われやすい。」
「お~。やった。新人ゲット~。」
「よし。目のいいやつが増えると楽になる。」
「サイなら怯えられたりしねえだろうしな。聞き込みもイケるだろ。」
船長の命令にヤジスさんとミランさんがガッツリ腕を組む。
何やら俺にやらせることを話しあってるが、俺は正直それどころじゃなかった。
それより心配なことが1つ。
俺、これからも小舟に乗るの決定か!?
船長を見るとニヤリと笑われた。
あんた、俺がグロッキーになってるの見てたな?
「海の男があれしきの波に酔ってんじゃねえ。慣れろ。」
やっぱりか。なんつー荒療治。
…おやっさんにミントとレモン常備してもらうよう頼んどこ。




