冒険の舞台・発見
「よお~し。今ん所、ひっかかるとこはねえな。」
「サイ。しっかり見とけよ~。」
「はい。出っ張ってますし。わかりやすいから大丈夫ですよ。あの上、穴がありますね。」
「おめえ目がいいなあ。」
「視力は悪いっすよ?」
「ちげえよ。波間の岩やカモメを見つけられるってことだ。海じゃあ波を見分けられるやつが生き残んだぜ?」
ヤジスさんに褒められた。
まあ、親父がそういうの得意で、昔から岩のどういう部分を目印にしたらいいかとか、岩の色合いで段差があるかどうか見分ける方法を教えてくれたからな。
人間は同じような色合いや質感のものが続くと誤認するが、俺は親父のおかげで岩場でケガをしたことはない。
海水浴に行くときしか役にたたなかった能力がこんなとこで使えるなんてな。
人間、何でもやっとくもんだな。
おかげで異世界でも生きてられる。
「おし。着いた。ヤジス。登れるか?」
「おお。結構固い岩だわ。いけるいける。」
「巣はどこだ?」
「あそこの真ん中、出っ張ってるとこです。」
「ああ?あ~。あれか。」
「っぽいな。」
「ああ。当たりかも。」
カモメの巣が当たり?
もしかして、洞窟の入り口ってことか?
「入口っすか?」
「もしくは通気口。」
「あの白いカモメは洞窟とか結構広い場所に巣を作るからな。あいつらが出入りするってことは中は広いってことだ。」
だから洞窟の目印になるのか。
白いってのしか憶えてないけど、便利な鳥だな。
今度見ることがあったら、見逃さないようじっくり観察しとこう。
俺がそんなことを考えてる間に、ヤジスさんが腰に縄をつけてするすると崖を上っていく。
ほんと身が軽いな。
あの人に命綱いるか?
こっちの命綱は海に落ちても波にさらわれないようにするためのもので、崖から足を滑らせるのを食い止めるものじゃない。
この程度登れないやつはマストにも上れないから、そもそも海賊の資格が無いらしい。
俺、登れないけど。
海賊だって船長に言ってもらったけど、マストにはまだ登らせてもらえないんだよな。
船長曰く、「ガキには10年早ええ。」だってよ。
これに関してはバクス、オル、おやっさん達も賛成していて、俺は未だマストに触ったこともない。くすん。
「あったぞ~。ちっと中入って見るわ。」
「おお~。気を付けろよ~。」
「お気をつけて~。」
出っ張りにたどり着いたヤジスさんの姿が見えなくなったと思ったら、ひょっこり顔をのぞかせて中の様子を確認してくる胸を伝える。
洞窟の中は危険だ。人口のものなら罠があるし、天然のものなら竪穴がいきなりあったりする。
俺とミランさんはヤジスさんが無事に帰ってくるのを祈りつつ、ジッとその場で待った。




