冒険の始まり
そんな日々を戦々恐々と過ごしていた俺に吉報が入った。
お宝の情報が手に入ったって話だ。
小さな島に伝わる言い伝えらしく、ほとんど忘れ去られているらしい。
良く見つけてきたよな。
まあ、おかげで船長の機嫌が回復した。
ヤジスさんのおかげだ。
「生きてたか~?」
「ぎりぎり…。何回か意識飛びました。」
「お~。そりゃ危なかった。喜べ。行き先が決まった。」
「ホントですかっ。どこです?」
「それは船長に聞きな。それ持っていくんだろ?」
「あ。つまみ。やべっ。失礼しますっ。」
「…あの子も大変だねえ。」
「おかげであんたは解放されたでしょぉ?」
「まあ、そうなんすけどね。」
そんな会話が交わされてることも知らず、俺は早足で船長室まで移動した。
いくら機嫌が良くても船長は待たされるのがきらいだ。
怒鳴られるくらいは覚悟しないとな。
「戻りました。つまみです。」
「ずいぶんかかったな。」
「ヤジスさんに会いました。」
「ああ。聞いたか?」
「はい。情報が手に入ったって。」
「それだけか?」
俺の返事に船長が不思議そうな顔をする。
そんな顔しててもイケメンはイケメンだ。世の理不尽を感じる。
それは置いておくにしても、船長が何を不思議がっているのかわからない。
それだけ?もっと聞いてると思ったのか?
「はい。つまみを持ってたんで。」
「ああ。」
「どこに行くんですか?」
俺の答えに納得したらしく、船長はつまみに手を伸ばす。
それを見ながら、俺はヤジスさんに聞き損ねた行き先について聞いてみた。
「ハッシュつう小さな島だ。小さな村くらいしかないとこで、資源もない。役人もいねえくらいだ。」
「そんなに小さい島に洞窟があるんですか?」
「その辺は行ってみねえとわかんねえな。今んとこ、こいつの情報があるのはそこだけだ。」
そう言って船長は三日月型の魔石を手に取った。
綺麗な石だと思う。光沢があって、薄く緑色だ。
何だか蛍石みたいだなと思う。
暗くなったら光るとか?
「風も吹いてきてましたし、幸先いいですね。」
「吹いてたか?」
「ええ。少しですけど。」
「そうか。くくっ。」
笑い方が魔王にしか思えねえけど、船長の機嫌はかなり回復したな。
さて、行き先も決まったし、冒険の始まりだ。




