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ギンカの店

コーネルの執務室兼応接室らしい部屋から出ると、もう空は暗くなっていた。

何の話かしんねえけど、えらく話し込んでたな。



見習いの俺は船長の後ろで立ってなきゃいけねえから疲れたぜ。

帰りにご褒美つってコーネルにチョコレート貰えたからいいけど。



素知らぬふりして盗み見たが、テーブルの上にはたくさんの海図にいろんな数字の書かれた書類が散乱していた。

どうもどこかの場所を探してるみたいだ。



海図を見る限り、どれも同じような感じに見えた。

海岸の線は単調なんだが、浅瀬に近いとこにいくつも同じ印が書き込まれていて、たぶん暗礁が多い場所なんじゃないかと思う。



まあ、パッと見た感想だから、何とも言えねえけど。

そんで、船長たちが探してる場所はその暗礁の多いとこの近くだ。



沈没船でもサルベージすんのか?

大変らしいけどな。金もかかるし。



まあ、俺は美味いメシが食えれば文句はない。

船長についていくだけだ。



「ちょっと早いけど、ご飯にしなぁい?」

「そうだね。さすがに疲れたし。」

「だな。ギンカの店にすっか。」



やった晩飯だ。

さっきチョコレートもらって、返って腹減ったんだよな。



船長たちが向かったのは、朱色の要塞にほど近い、大通り沿いの赤い屋根に3色の煉瓦を使ったフィッシュボーン模様の店だった。

入口から美味そうな匂いが漂ってくる。



う~。腹減った。

腹いっぱい食うぞ!



「「いらっしゃぁ~い。」」

「きゃあ。オスカー様よぉ。」

「ああん。バクス副船長もいるぅ。」

「珍しいわ。オル様もご一緒よぉ。」



入口を潜ると、黄色い歓声に包まれる。

ちっ。これだからイケメンは。爆ぜろ。



店の中はシンプルな木製のテーブルとイスが並んでいて、それぞれのテーブルに綺麗なお姉さん達がついている。

つまり、そういう店でもあるってことだ。



だが、お姉さんたちは自分たちの客には目もくれず、船長たちばかりに熱~い視線を投げかける。

ちなみに、俺には一瞥もない。わかってたけどな。くそっ。



「ここも久しぶりだな。」

「そおよねぇ。半年ぶり…かしらぁ?」

「そういやそうだね。サイ。ここはご飯がおいしくて有名なんだ。期待していいよ。」



3人は自分たちへの秋波なんて素知らぬ顔で店の奥へと進んでいく。

途中で「あの小さい子だれ?」「さあ?あの船にいるにしては普通よねえ。」なんて聞こえた気がしたがスルーした。



ムカつきはするが、わかりきってることを気にしてたら美味いメシは食えない。

今の俺には「期待していい。」と言われた料理のことしか頭になかった。

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