船長と朝メシ
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「それで、あの、船長はまだ飲まれますか?」
「いや。腹減ったしな。メシにする。」
「ああ。それなら出来てますよ。サイっ。おめえの分もあるから、取ってきな。」
「はいっ。行ってきます。」
おやっさんに声をかけられると、船長に一礼して厨房に急いで向かう。
もちろん早歩きだ。
最初の頃は散々怒鳴られて蹴られたからな。
今ではどんな時でも走り出すことはなくなった。
厨房に入るといい匂いが鼻をくすぐる。
起きた時は頭痛くて気分も悪かったけど、今はもう大丈夫だ。
俺、そんなに酒弱くないしな。
どっちかというと強い方に入ると思う。
「おはようございます。船長と俺の朝飯下さい。」
「おう。サイっ。ほらよっ。パンは今焼けたやつがあるぜ。」
「やったっ。美味そうっ。」
喜んで焼き立てをもらうと、戻ってきたおやっさんも含めて厨房に笑いを誘ってしまった。
反応が露骨すぎたか?だが、日本で焼きたてのパンなんて食ったこと無かったんだよ。
すげえ美味いの。
焼きたてのパンって、香ばしいだけじゃなくて、甘い香りがするんだよな。
後はいつもの豆のスープと水をもらって船長の元に戻った。
こっちの水って美味いんだよな。
飲み水は特殊な箱に入ってて、そこから汲んでる。
冷蔵庫みたいなもんらしく、冷やして保管していて冷たい水がいつでも飲める。
「お待たせしました。朝食です。」
「んっ。」
「今日はパンが焼き立てです。」
「おめえはメシのことになると嬉しそうだよな。」
「美味いメシは生きる糧ですっ。」
「まあ、そうだな。よし。食うぞ。」
手を合わせて早速焼き立てのパンに手を伸ばす。
ライ麦パンみたいな固めのパンなんだけど、焼き立てはやっぱりちぎりやすい。
ちぎったのを口に放りこむと、穀物の香りと独特の酸味が口の中に広がり、その後甘みが加わる。
滅多に味わえない甘みを堪能していると、船長が面白そうな顔をして見ていた。
「お前はホント美味そうに食うよな。」
「美味いもんは美味いって顔して食わないと、失礼ですから。」
「はははっ。」
何がおかしいのか、船長がウケた。
まあ、上機嫌なのは助かる。
俺は内心首を傾げながらも豆のスープを一口食べた。
レンズ豆のような平たい豆で、結構しっかりした食感だ。
これ一杯で昼まで持つんだから、腹持ちいいんだよな。
朝だから、あっさり目の味に作られてて食いやすい。
これも船によっては塩だけだったりするらしいが、この船のはちゃんと出汁が取ってある。
この船の出汁は基本魚だ。
海賊は肉食ってるイメージだったから最初に食った時は驚いた。
それをおやっさんに言ったら、「周りが海なのに、海のもん食わねえなんざバカだろうが。」と言われた。
まあ、そうだよな。
新鮮な魚介類が手に入るのに通り過ぎるだけなんて残念過ぎる。
あっさり魚介スープに舌鼓を打ちつつ、出来るだけ早く食事を済ませた。
船長の世話しないといけねえしな。今日は雑用も多そうだ。




