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朝の説教

船長を探したら、食堂で飲んでた。

どんだけ酒強ええんだよ。



「船長。おはようございます。」

「あ?…見習い。てめえ、昨日酔っ払いやがったなっ。」



腹に蹴りが一発。

今日も理不尽がさく裂してる。



ま、約束破ったのは俺だけど。

でも、知らなかったんだって。



「す、すみません。料理に酒が入ってるなんて気がつかなくて。」

「ああ?食えばわかんだろうがっ。エールだぞ?」

「知らなくて。すみません。」



最低限だけ答えを返して、後は謝る。

そしたら、とりあえず落ち着くのか、普通に話してくれるんだよな。



大体、あんなフルーティーな香りが酒だなんてわかんねえっつうの。

船長がいつも飲んでるエールはビールみたいな麦っぽい香りなのになあ。



「…そういや。ガキだったな。ありゃあ、この辺で一人前になったら振舞われるやつだ。おめえにゃあ、10年早ええ。」



ついこないだ、この船で成人したんだけどなあ。俺、遅生まれだし。

バーでバイトしてたし、酒も慣れてんだけど。



簡単なカクテルなら作れるんだぜ?

店長にも筋がいいって褒められたんだ。



まあでも、こっちの連中の体格と比べりゃガキだわな。

年も聞かれてねえし。



ガキだと思って手加減されんなら、その方がいい。

情けないだって?何とでも言え。



ここは海賊船だ。

「普通の扱い」なんてされたら、現代っ子の俺にはとても耐えらんねえ。



「気を付けます。」

「まあまあ。船長。ちゃんと煮込んだやつなら、あんな風にはならんでしょう。昨日は急いで作ったやつを出しましたから。」



おやっさんが助け舟を出してくれる。

ありがとう。おやっさん。



酔っぱらっちまったが、あの料理は美味かった。

もう食えないなんて、拷問よりつらいぜ。



「ああ?んなの関係ねえよ。食ってりゃ酔いも回ってきてただろ。そんときに止めりゃあ良かったんだ。」

「ああ。そういやずいぶんご機嫌で食ってましたねえ。」

「初めてあんな美味いもん食ったんで。止まらなくて。あ、いつも美味いんですけど、あれはまた特別美味かったです。」



隠しても仕方ないので、正直に答えた。

この船のメシはかなり美味い。



おやっさんの腕もあるだろうが、実は他の厨房のメンバーも元コックだったりする。

自己紹介で聞かされたときは驚いたけど、こんな美味いメシが食えるなんてすげえラッキーだと思った。



やっぱ、プロの修行したやつの作るもんは一味も二味も違う。

口に入れた瞬間美味いって思う料理作れるってすげえよ。



俺は少しでも何か返したくて、皿洗いや芋の皮むきなど、船長の用事が無い時は厨房を進んで手伝っている。

俺が作ってもああはならない。プロすげえ。



俺はもともと一人で過ごすことが多かったから、自炊するのは当たり前だった。

両親ともに海洋学者で一年の大半を海で過ごしてたからだ。



小さいころはばあちゃんに面倒みてもらって、でっかくなってからはばあちゃんに料理を習って自分で作るようになった。



おかげでそこそこのレパートリーがあるが、どれも日本の昔ながらの家庭料理ばかりだ。

この船で出される様々な技が駆使された料理には足元にも及ばない。



だから、昨日も純粋に美味いもんを堪能してただけなんだよ。

酒入ってたなんて知らねえもん。



「はははっ。そうかそうか。美味かったか。船長っ。こいつコックの素質ありますよ。」

「何乗せられてやがる。この船のメシが美味いのは当たり前だ。…まあ、初めて食ったんだし、知らねえもんは仕方ねえ。次からは気をつけろ。」

「はいっ。」



ああ。何とか助かった。

なら、次の行動の支持を仰ぐか。

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