夜も明けて
「うっ…。あったま痛え。」
ガンガンする頭を抱えて重たい身体をなんとか起こす。
あれから食って給仕してまた食って…あれ?記憶が飛んでる?
てか、ここどこだ?
ソファー?いつも医務室の端っこで寝かせてもらってるのに。
「…船長室。」
ソファーに張られた豪華な布地を見て、自分が船長室にいるとわかり思わずつぶやく。
…昨日何があった?
服…は昨日のままだし、汚れてもいない。
頭の痛みから二日酔いっぽいけど、昨日は飲んでねえしな?
見渡してみても船長はいない。
外からの光の差し込み方で朝だとわかる。
寝坊じゃねえな。よかった。
とにかく、顔洗って船長のお世話だ。
もしかしたら、朝まで飲んでたりするかもしんねえし。
起き上がって身支度を整え、急いで甲板に行く。
予想通り、甲板の上は死屍累々の状態がだった。
「うっわ。酒クセーっ。」
「おお。サイ。早ええな。昨日は大変だったろ。大丈夫か?」
俺が目の前に広がる光景に唖然としてると、厨房のおやっさんが声をかけてきた。
名前はボブっていうらしいけど、呼ばれることはあまりない。
みんな「おやっさん」と呼んでるからだ。
俺もそう呼んでる。日焼けに白い歯が眩しい豪快なマッチョだ。
それにしても、「大丈夫か?」ってなんだ?
俺、昨日何かしたか?
「あの、昨日、俺なんかしましたか?気がついたら朝で。」
「ああ?覚えてねえのか。昨日、肉のエール煮込み食ったらひっくり返ったんだよ。お前。」
「え。俺、メシ食って酔っぱらったんですか。」
「はははっ。お前だけじゃねえけどな。かなり度数が高いのぶち込んだからよ。しかも、ホントは1日煮込む奴をすぐ出したから、アルコールがたっぷり残ってるやつをよ。」
「あ。あの美味いやつ。」
「ははっ気に入ったか。今度、ちゃんとしたの食わしてやるよ。アレくらいしねえと、あそこのバカどもはつぶれねえからな。
だが、お前さんも気がついたら結構食っててなあ。陽気に笑ってたぞ?顔真っ赤だったから、船長命令で副船長が連れてったんだ。」
使用済みの皿を集めておやっさんを手伝いつつ、記憶の無い理由を聞く。
酒を止められてたのに、アルコールたっぷりの料理をがっつきまくったのか。俺。
怒られるかなあ。知らなかったんだけど。
でも、それなら船長を探さないと。
寝てたらそのままにして、起きてたら水でも持っていくか。




