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Episode9

地図の行き先が分かると、すぐにメルのテレポートで目的地へと転移した。

 飛ばされた場所は厳かな宮殿だった。

 ここに……神崎とレノンが……。


 「圭吾、すぐに向かって」

 「お前はどうするんだ?」

 「神崎朱莉はまさに今窮地に陥っている。そして、あなたが向かうことによってまた少し未来が変わる。私の予知夢は、その時が迫るとより具体的な未来を私に告げる。私はそれを安全な場所で確認しなければならない」


 「分かった」

 俺はすぐに走って宮殿の中へと入っていった。

 どこだ、神崎、八雲!


 戦闘はとっくのとうに始まっているだろう。

 メルの予知が本物なら、神崎は間違いなく劣勢。

 通路を走っていると、目の前の大きな扉の向こうから激しい爆発音が鳴り響いた。


 そこか!

 俺はドアをタックルでぶち破り、落ちている砕けた石を拾って神崎のもとへ走った。

 レノンはもう合金手裏剣を神崎に投げつけようとしていた。


 させるかよ!!

 俺は神崎とレノンの間に入り、間一髪のところで手裏剣を石で弾いた。

 「んなっ……あんた……」


 神崎が驚きながら俺を見る。

 「助けに来たぜ」

 とは言ったものの……これからどうする?


 相手は神崎でも手こずる相手だ。

 レノン……そして隣にもう一人女の子がいる。

 さらには……。


 「あんた、能力の出し惜しみなんかしてる場合じゃないわよ。こいつら、二人で戦うことに慣れてる」

 「あのー……神崎さん?」

 「何よ」


 俺はゆっくりと神崎に向き合う。

 真剣な眼差しをしていた。

 多分頭の中でどうやってあの二人を俺と協力して倒そうかなーなんて思っているのだろうか。


 だが、それは叶いそうにない。

 「あのですね、俺実は……」

 「何?」


 俺は手で頭を書く。

 神崎はちょっと不機嫌そうに見える。

 「俺、自分の能力何なのか分かってないんだ」


 誤魔化そうと笑顔で答える。

 「はあ!? あんた、じゃあ何しに来たのよ! ただの足手まといじゃない!」

 神崎が怒鳴りだす。まあそうだろうな。


 「まあ待てよ。向こうの二人は俺が何の能力を隠し持ってるか警戒してるはずだ。そして俺がすぐに自分の能力を開花させれば……」

 「そう簡単に分かるわけないでしょ! 私だって二か月はかかったわ!」

 子供のころからすごいと言われてた神崎でさえ二か月……。


 「いや、まあ何とかなるだろ。とにかく、今はあいつらをどうにかするかを……」

 「いつまで話してるの……」

 いつの間にか背の小さな女の子が近くに詰め寄り、掌から炎の渦を作り出した。


 「くそっ」

 神崎は俺を蹴飛ばして攻撃を回避した。

 「いってーな! 他になんか無かったのかよ!」


 「うるさいわね! だったら自分で躱しなさいよ!」

 「こらこらアスカ、ちゃんと当てないとだめよ」

 レノンがこちらに歩み寄ってくる。


 この女、アスカって言うのか……。

 「ごめん、お姉ちゃん」

 「私はあっちの女の子やるから、アスカはあの男と遊んでて頂戴」


 「うん!」

 神崎は自分一人で十分ってことかよ……。

 「随分と嘗められたものね。私が本気出してないことは十二分に分かってるんでしょうね」


 「何言ってるのか聞こえないわよ。早くかかってきなさい」

 神崎とレノンは戦闘を開始した。

 もう何が何だか分かんねえよ。


 「あなたは私と」

 アスカ……見たところ火炎系統の能力を使うのか?

 なんにせよ、俺は出来るだけ時間稼ぎをして神崎の負担を減らすことが役目だ。


 「上等だよ」

 アスカの両腕に炎が纏う。

 どう来る?


 俺はアスカの周りを小走りで旋回した。

 先手では動かない。

 アスカの攻撃を確実に躱してそこから攻撃のチャンスを伺う!


 アスカが腕を払うと、火の粉がいくつか飛んできた。

 早い……が、躱せないほどではない。

 俺はそれを避けて少しだけ間合いを詰める。


 「むむー……」

 アスカは少し不機嫌そうだ。

 攻撃が当たらなかったのでイライラしているのだろう。


 これは好都合だ。

 「なんだ、俺に火の粉当てられないのか? 何というか見た目通り弱そうだなー……」

 「あ、当てられるもん!」


 アスカはムキになって腕をぶんぶんと振りまわした。

 大量の火の粉が俺を襲う。

 だが、一度に腕を振って飛んでくる火の粉は最大三個。


 一度に飛んでくる最大の数は六個だ。

 そう考えれば、弾幕はそうそう厚くない。

 更にこいつはまだまだ子供だ。


 軽い挑発に乗ってもう火の粉しか飛ばしてこない。

 さっきみたいに広範囲で炎ぶっ放されたら絶対に躱すことなど出来ない。

 後は神崎がレノンを倒すのを待つだけだ。


 「おら、どうしたよ」

 挑発を続ける。

 「んー! もう! 意味分かんない!!」


 俺はどうやらアスカを怒らさせすぎてしまったようだ。

 アスカは両手を上にあげて、そこに小さな火の玉を作り出した。

 「ちょこまかと逃げるな!」


 その火の玉はどんどん大きく膨らんでくる。

 巨大ボルケーノかよ!

 どうする?


 あのサイズ、どんなスピードで飛んでくるんだ?

 避けられるか?

 それとも突っ込んでアスカを叩くのが早いのか?


 くそ、考えている暇はねえ!

 俺はアスカ目がけて駆け出した。

 あの攻撃はまだチャージが必要なはず!


 なら、その前に俺が大勢を崩させれば……。

 「わっ、わわっ!」

 案の定アスカは慌てふためいたが、パニックに陥った挙句予想外の行動に出た。


 まだ溜めの途中だったはずの炎の大玉を俺に投げつけたのだ。

 「想定内だよ!」

 俺はひらりと大玉を躱し、そのまま走る。


 後少しでも大きな大玉になってたら絶対に躱せなかっただろう。

 「来ないで!」

 アスカは目を強く瞑りながら拳をギュッと握った。


 アスカまで残り一メートルといったところで、目の前に炎の壁が現れた。

 いや、これは炎でなく……溶岩!?

 まるでこの場で噴火でも起きたみたいだった。


 壁は俺に向かって崩れ落ち、再び間合いを取る。

 くそ……もう少しだったのに……。

 だが、時間は大分稼いだ。


 神崎の方はどうなって……え……?

 俺は目を見張った。

 神崎は片膝をついて下を向いていた。


 あの神崎がサシで押されてるっていうのか?

 


 「ハァ……ハァ……」

 レノンは息を切らしていた。

 「どうよ……絶対解除さえなければ私の方が強いのよ……」


 だがレノンも重傷を負っていた。

 神崎のエネルギー弾を数発食らっていて左腕が機能していなかった。

 だが、ダメージは神崎の方が上回っている。


 ついには体制を維持できなくなり、その場に倒れこむ。

 「なんで……解除できないの……ぐっ」

 手で脇腹を抑える。


 先ほどレノンの打撃をもろに食らってしまったのだ。

 「私の勝ちは決まったみたいなものだし……最後に教えてあげるわ……」

 レノンは息を切らしながら言う。


 「私達の後ろには、もう一人協力者がいる……」

 レノンはマフラーをするすると取った。

 レノンの首には何か首輪のようなものが作られていた。


 「その男は私にこれをくれた……あなたの絶対解除能力を無効化する特殊な波動を出しているわ……」

 「な……」

 レノンはマフラーをし直す。


 「アスカも、ネックウォーマー着けてたでしょ? 同じものをつけてるの」

 レノンの息切れは次第に収まり、体力を戻していた。

 神崎は地面に這いつくばったまま、レノンを睨む。


 「こんなものどうやってく作ったのか知らないけど、そんなことはどうでもいいわ。あの男は約束してくれた。あんたを倒せば私達姉妹に自由をくれてやると」

 「……自由?」

 「そう、自由……」


 レノンは少し遠く切ない目を見せた。

 「私達姉妹はある洞窟でひっそりと暮らしていた。ちょっと問題を起こしちゃってね。追ってから逃げる毎日に、アスカの精神状態は限界に近かった……。そんな時にあの男が現れた。神崎朱莉を殺せば、解放してやると」


 レノンの周りに白金の粉がキラキラと舞い出す。

 それはやがて形を成し、銀色の鎌となった。

 レノンは鎌を持ち、それを頭上に持ち上げた。


 「だから……これで、終わりよ……」

 神崎は指一本動かせなかった。

 「やく……も……」


 鎌が振り下ろされた。

 だが、その鎌は大きく軌道を変えた。

 「あぁっ!」


 レノンが遠くへ飛ばされる。

 「何……?」

 「あーーーあぶねー! 間に合ったー!」


 また……この男……。

 「おい、立てるのか?」

 篠原が神崎に手を差し伸べる。


 神崎は力を振り絞ってその手を握り、立ち上がる。

 「どうして……」

 神崎は俯いたまま言う。


 「どうして私を助けるの? あんた、死んじゃうかもしれないのに!」

 「んー……」

 篠原はきょとんとした顔で私を見る。


 「目の前で人が殺されて平気な奴なんていねーよ。それに、助けなきゃって思ったら勝手に身体が動いちまったんだからしょうがねえだろ」

 そんな……そんな単純な……。

 瞳から涙が溢れ出てきた。


 この男の言っていることが理解できない。

 けど、温かい……。

 私は生まれつき天才と言われていた。


 正直、周りからの期待がストレスになっていた。

 成果を上げないと、結果を出さないと。

 最終的に、私は世界最強の能力者何て言われるようになった。


 だけど……私は友達一人守れない……こいつには、それが出来るっていうの?

 「お、おい、そんなに怖かったのか?」

 泣いている私を見て、篠原は慌てていた。


 この私を助けたんだから……もっと胸張んなさいよ。

 私は涙を拭って倒れているレノンと、レノンを案じるアスカを見た。



 「さあ、仕切り直しよ」

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