生娘 天然娘 養殖娘
「ねえ、幼女、少女ときて、次はなんて表現したらいいんだろう」
不意に男友達の勇樹に聞かれ、私は
「生娘?」
と答えた。
「処女限定なわけ?」
勇樹は教室をぐるりと見回してから小声で言った。教室には私と勇樹、あとは掃除当番くらいしか残っていなかった。ちらりと視線を向けられて顔から火が出そうだった。ごまかすように口をとがらせながら会話を続ける。
「あー? 生娘って処女限定だっけ?」
「たしかそうだ」
「アンタの方が頭良いんだから聞かないでよね。類義語辞典と戯れていてほしいわ」
「いやいや、俺はお前の天然な答えが欲しくてね」
勇樹は眼鏡をむかつく仕草でくいっと上げた。ブレザー姿で様になっているのがさらに私をイラつかせた。
「天然って、私、天然のつもりないんだけど。しっかりぬくぬく育った養殖よ」
「わー怒った怒った。天然って天然っていうと怒るんだよなー」
「その説はもう浸透したから無駄だよ」
「しかしだなあ」
勇樹は私の胸元を見てニヤリと気持ちの悪い笑みを浮かべた。
「なんだなんだ、気持ち悪い」
「いや、ブラウスのボタンすげーかわいいのついてる」
私が胸元を見ると、一つのボタンが猫の形になっていた。
「ああっ、お母さん」
「天然に養殖されるとやっぱ天然なんじゃない?」
帰ったら付け替えなければと考えながら、私はボタンを握った。
「普通着るときに気づくと思うけど」
勇樹の声を私は無視した。