初章
とある城に来ていた。
堀があって、小高いところに立っている城。
城の周りには桜の木が植えられていた。
その桜も今は散っている。
散っている桜が雪のようだ。
桜の木も多いから、そう感じる。
はらはらとためらいもなく、どんどんと散っていく。
桜の木は散るから美しいという。
でも、散る姿は寂しい。
それでも桜は散ることをやめない。
最後の一枚になるまで散り続ける。
桜並木の中を歩いていた。
桜並木の間から城がそびえたっているのが見える。
この城、初めて見たのに、見たことがあるような感じがする。
写真か何かで見たのかな。
だって、こんなに桜並木が綺麗なんだから、きっと日本の桜の名所か何かに選ばれているに違いない。
それにしても、どこで、どの写真を見たのだろう?
思い出そうとするけど、思い出せない。
こういう思いをするときは、胸に何か引っかかったような感じがして気持ちが悪い。
どこで見た?
もうすぐ出そうなんだけど、出てこない。
なんかいやだなぁ、この感じ。
桜の花はどんどん散っていく。
散っていく花びらがぐるぐる回っているような感じがした。
視界が真っ白になった。
きっと桜のせいだ。
桜の……せいだ……。