4月6日 曇り 1
4月6日
『ジリジリジリ~』
目覚ましがけたたましい音を立てて鳴り出した。
念のため横になる前にスイッチを入れていたのが幸いしたようだ、今はまだ1時のはず、と思い携帯を見ると1時30分となっている。
「うそ、目覚ましの電池が切れ掛かっているのか!」
そう叫んで机の上の書類を無造作に握り締め、着の身着のまま一目散に駅まで走り出した。
駅に着いたのは制限時間ギリギリの1時55分。
何とかセーフと思いながら誰もいない改札に行くと、
メモ用紙のような小さな紙に 『チケットをお持ちの方は入場してください』 と書かれていたので
「お邪魔します」と小さな声で言いながら入って行った。
新幹線のホームで息を整えていると向こうから時間通りにヘッドライトが見えてきた。
しかしそこに入ってきたのは見慣れた車体ではなく黄色に塗られた車体。
「ドクターイエローだ」
普段は保守点検に使われているあの車両だ。
しかもその中央辺りにご丁寧に客車が連結されたいるではないか。
「たしかに特別列車だな」
そうつぶやき、その客車の一つだけけ開いているドアよりその車内へ入って行った。
誰もいないと思っていたのだが、いきなり声が聞こえる。
「こんな田舎に止まったと思ったら自分以外にも参加者がいたようですね」
そこにはいかにもインテリぽい眼鏡を掛けた細身の男性が座っていた。
「おはよう、いやまだコンバンワ、かな」
「12時を過ぎているし、おはようでいいでしょう、それよりも少し静かにしていてもらいませんか勉強したので」
そういう彼の手には分厚い本が握られているその本のタイトルは
『天気予報に見る確率論とその正確性』
「えっ、試験があるのか」
「二次試験と用紙に書いてあったじゃないですか、一々騒がないで下さい」
そう言うとその男はまた本を読み出してしまった。
ウソだろ何の勉強もしていない、というか昨日の今日では準備どころではない、それに、知力だったら誰にも勝てる気がしない。
でも、確かあの時の求人情報には学力不問と書いてあったし、それにやる気と興味がある人と書かれていたような記憶がある。
ここはやる気をアピールして何とか・・・そう思っていると新幹線が減速していき、どうやらどこかの駅に停車したようだ。