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3月6日 晴れ ①

 3月6日


 節気学園の合格発表の日、俺は緊張しながら校門をくぐり、掲示板がある場所へと向かっていた。

 試験はやるだけの事はやったし、後は運を天に任せて確認をするだけだ、そう思い歩いていくとすでに掲示板の前では大勢の人が悲喜交々の様子を見せている。


「よしっ」、「合格だー」、「・・・・」、「やったぜ」、「あっ無い」・・・

 などの声が聞こえてくる、それを横目に見ながら俺自身の確認をしなければ。

「普通科はここか、俺の番号は1047だから・・・」

 そこにはおなじみの光景、合格者番号がずらっと並んでいる上から1001、1003、1006・・・・・1043、1045、1046、1047・・・。


「よっしゃー合格だー」

 小さくガッツポーズをしていると後ろから声がする。

「おめでとうございます、あなたも合格ですか」

 その声に振り向くと髪の長いちょっと、いやかなり美人の女の子だ。

 着ている制服からするとこの辺りの中学校ではないというのが分かる。


「あれ、どこかで会ったけ?」

「初めてですよ、こちらに引っ越してきたばかりで知り合いがいなくって、合格したのがうれしくってつい・・・、迷惑でしたか」

「全然、問題ないっす」

「ああよかった、じゃあ高校でもよろしくお願いしますね」

 そう言うと女の子は歩いて人ごみの中に入っていった。


 その後ろ姿を見送った後、とっても。イヤものすごく重要なことに気が付いてしまった、それは名前を聞くの忘れてた。

 せっかくお友達になれたかもしれないのに・・まあいいか高校に入学したら会えるかも知れないし、そんな時、また後ろから今度は聞き覚えのある声がする。


「おっ、あ・お・い、お前も合格したか」

 驚いて振り向くとそこには親友の卯月が笑顔で中学の時のクラスメイト達と一緒にいる。

 ちょっと待てよ、「お前も」ということは小学、中学と続いてまた高校でも一緒じゃないか本当に腐れ縁だよ。

「ああ合格だ」

 俺はその言葉とともに満面の笑顔で答えてやった。

「それは奇跡だな、高校でもまた楽しくやろうぜ」

 卯月はいつも成績はトップクラスだったからミスがなければ余裕で合格した感じだが、俺なんか半年前の模擬試験でCランク(努力を要す)だったからここに入れたのは本当に奇跡だよ。

 まあ確かにラスト三ヶ月は結構勉強はしたつもりだけどな。


「よーし、合格記念にみんなでカラオケでも行こうぜ、もちろん藍も行くよな」

「もちろんOKだよ」

「「「僕らも行くぞ」」」

 俺の答えに続いて答えたのは横にいた元クラスメイトのスリーマウンテンズこと山田・山本・山口の三人組だ。

 特別仲が良かったわけではないが、何かあると、いや無くても必ずクラスのどこかにはいるという神出鬼没な連中だ。


「じゃあ俺も入れて五人か・・・他に行きたい奴はいないか」

 卯月は俺ら以外の同じ中学の奴らにも声をかけている、が相手は主に女性いや、女性だけだ、しかもことごとく断られている。

「しかたない、じゃあ行くか・・・野郎ばっかりで」

 最後のつぶやきは明らかに心の声が漏れている、すこしションボリした様子でこちらも見ずに卯月は歩き始めたので俺たちは慌てて追いかけた。


「おおーい待てよ卯月、女の子がいなくたって楽しめるって」

 俺が後ろから背中を軽く叩いたが、力なく飛ばされてしまった。

「おいおい、俺そんなに力入れてないぞ」

 今の一撃で卯月は我に返った。

「はっ、俺は一体何をしていたんだ」

 いつもの事だが卯月は女の子に振られると魂がしばらくどっかに行ってしまう、でも今回はダメージが少なかったのか意外と回復が早かったな。


 いつの頃からか魂を呼び戻すのが俺の役目の一つにになってしまっている。

「やっと戻ったな、さあカラオケ行こうぜ」

 俺はわざと明るく、今までのことが無かったかのように俺は話し掛ける、これもいつものことだが、卯月はどっかに行っている間の記憶は無いようだし、説明するのもめんどくさいしな。


「また俺何かしてたか」

「大丈夫、大丈夫、大した事じゃないから気にしなくたっていいって、なあ山田」

 慌てずにこれもいつものようにスリーマウンテンズに振ることにした。

「そうそう、なんでもないからとっとと行こうぜ」

 卯月がふられて落ち込むのはいつものことなので『早く行こう』でどうやら意見が一致しているようだ。


「おかしいな何か大切な事忘れているような気がするんだが・・・まっいいか」

 昔のことは忘れてすぐ立ち直るのも卯月だ・・・って早すぎだろうと突っ込みたいが、ここは我慢だ、でも本当に忘れるから同じ過ちを繰り返すのかもしれないな。

 そんなバカなことをしているうちにいつの間にかカラオケ店の前まで来ていた。

「よーし、今日はオールで行くぞ」

 卯月がそう意気込んでいると。

「お客様申し訳ございません、高校生以下のお客様は午後6時までとなっております」

 確かに壁の看板に条例で云々と書かれている。

「仕方ない、時間一杯行くぞ」

 というわけで3時間のコースでの入店となった、そして部屋に入ろうとした時に俺の携帯が鳴り出した。


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