2次試験通過者 空賀 藍 ①
「では次は 山口県出身 空賀 藍 十五歳」
「やっと俺の番だよ」
今までの人達皆すごい人ばかりだよ、それに比べて俺は自慢する能力がないのが特徴か?
「天空時さん、俺って今までの皆さんのようなすごい特徴ってあったかな」
「いえいえ、ご謙遜を、気付かれていないようですがあなたにもちゃんと人よりも変わった力はありますよ、さもないと候補者にすら選らばれません」
「じゃあ、おれの力って?」
「空賀様、あなたの力はウソがつけないということです」
「えっ、はぁ?」
いやそれは力ではなく性格だろ、今までだって・・・あれウソを言った記憶が無い。
「お気づきになられましたかな、正確に言うとウソを現実化するというのが近いかもしれないですがね、だから空賀様が言えば世界を滅ぼすことも可能です」
「ちょっと待て、そんな恐ろしいこと言うはずないぞ」
そう言うとそばで聞いていた流氷さんがほっとしたように
「これで安心ですね、もう『世界を滅ぼす』なんて言えませんね」とつぶやいた。
「そうですな、もう『世界を滅ぼす』とは言えなくなりました、それにですな、空賀様の力には続きがありまして力を使うには条件があります、それはウソに見合う代償を払わなければならないというものです」
「じゃあさっきみたいな事を俺が言ったらどうなってたんだ」
それに対する天空時氏の答えは衝撃的なものだった。
「そうですな、世界の軍隊を動かす力があったら世界大戦、科学者だったらバイオ兵器又は化学兵器とかの開発成功、もちろんその代償としてご自信も亡くなりますが…またはそんな力もなければ自分が死ぬことでこの世界を終わらせる、そんなところでしょうか」
危ない危ない、つい繰り返して「世界を滅ぼす」なんて言っていたら恐ろしいことになっていた、これからは注意してしゃべらないと大変なことになるな。
いやまてよ、今まで無事だったんだからあまり気にしないほうが得策かな。
「それとですな、もう一つだけ、空賀様の力には発動条件があります」
「えっ、めんどくさいものじゃないよな」
「簡単なものですよ、言った言葉を2人以上の人に同時に聞いてもらうというものです」
確かに簡単だが意外にめんどくさいぞ、つぶやいただけじゃだめだし、誰かほか人と1対1で話をしている時に言ったのは無効か、それに大人数の前でその時はウソだと分かっている事を言うのにも意外と度胸がいるよな。
「一つ聞いてもいいでっか」
このしゃべり方は間違いなく雹島さんだ。
「ワテに幽霊が憑いたのはさっき空賀はんに臭いがするって言われたからでっか」
「先ほども言いましたように雹島様に憑いたのは5年前からです、それにですな、あの時は先に空賀様が『やめよう』とおっしゃいましたので、あの場を収める最善の方法が雹島様に憑いているものを祓うことだったのでしょう」
「あっ、でもその時の代償は払ってないぞ」
あれからしばらく経っているが体はなんとも無いし、何か変な事も起こってないよな。
「きっとね、おばあちゃんが引き受けてくれたんだと思うよ、だっていつもより疲れてたみたいだったもん」
疑問に渉君が答えてくれた、でもそれなら知らなかったとは言えハナさんには悪いことをしてしまったな。
ちょっと待てよ、本当はハナさんはここに来る予定は無かったんじゃないのか、それなら俺が言うということが事前に判っていたのか。
まっ、まさか言ったから現れたなんて事は無いよな。
「どうした、空賀困ったような顔をして、ハナの事は気にしなくても大丈夫だぞ、あのくらいでくたばるような柔な婆さんじゃないぞ。おっと、婆さんなんていったらワシの方がくたばるな、はははは・・・」
豪快に笑っているのは御神渡首相だ。
「それにだな、黙っとるように言われとったが、ハナは孫たちの事が気になって昨日からここで待ってたぞ、まさかお前が言ったから現れたなんて思っとらんよな」
図星だよ、首相にはまるでお見通しだな、それにしてもハナさんの行動力はすごいな、ついてこようとしていたとか霧咲兄弟が言っていたから、二人が旅立ってからすぐに自分もこっちに向かって来たのか、どんな交通手段を使ったかは聞かないでおこう。
「やはり大婆様は私たちより先に到着されていらっしゃったのですね、お見送りしていただいた時に不自然な荷物に気付くべきでしたね」
やれやれというような感じでかおりさん・・いやこれは夢乃さんが思い出したように言っている。
「つまりだ、今回の一件はたいしたウソではなかったということだ分かったか、それよりお前を発見する原因となったウソのほうが大きいだろうが」
御神渡首相はそう言っているが俺何かウソをついたかな、思い当たることが無いんだけど・・・。
「その顔は何のことやらという感じだな、一ヶ月前を思い出してみろ」
「一ヶ月前・・・ちょうど高校の合格発表の日だな。それと・・あっ」




