2次試験通過者 雹島 恭介(ランゲルハンス島島)④
「お婆ちゃんに説明をお願いって頼まれたから言うね」
渉君がしゃべり始めたので皆で固唾を呑んで見守っている。
「あのね、おばあちゃんね、がんばりすぎるとお婆ちゃんになっちゃうの、だからいつもはね、お山にいるんだよ、分かった?」
良く分からない・・・きっと他の人たちも同じ感想だったのだろう、首相以外の皆がポカンとした表情になっている。
そんな時
「渉では分かりにくいと思いますので私、夢乃が説明しましょう」
いつの間にかかおりさんは夢乃さんに変わっていた。
確かに難しい説明は夢乃さんの方が合っているだろう。
「私たちの大婆様は先ほど言いました通り現在九十歳で間違いありません」
「お帰りになられた時はそう見えましたが、入って来られた時の感じでは私の見立てでは六十代といったところでしたわよ」
流氷さんが聞いているがこれは皆が思っていることを代表して聞いた形となっている。
俺もその質問をしたいと思っていたところだ。
「不思議に思われても仕方ありません、実は私たちにも分からないことが多く、一度聞いたかとがあるのですがその時大婆様がおっしゃったのには山で力を補給していますとのことでした」
「そっ、その力って若返りの秘薬か何かですか」
流氷さんさんは目を輝かせて夢乃さんに近寄っている。
「残念ですがそのような類ではないと聞いています」
「そうですか残念ですね。新薬になると思いましたのに」
夢乃さんの答えに流氷さんは本当に残念そうだ。
新薬開発というよりは本当は自分で使ってみたかったのかも知れないけど・・・。
若返りの秘薬でないとしたら力って何なんだ。
その時に雷音君が痺れを切らして話し始めた。
「お前らが暴れている時、あのばあさんは指示を出してるだけでなくてな、見えなかったかも知れねえが、ばあさんの守護霊みたいなのがお前らが戦っている奴を押さえつけてたというか、何か話してる感じだったぞ、あれが力って言うやつか」
雷音君はそう言っているが、それが見えた者は他にはいなかっただろう。
「それでな、その力があったからお前らの一太刀が当ったみたいなもんだ、本当の始末はあのばあさんがやったんだぜ、それで力を使いすぎで本来の姿に戻っちまったんだろ」
それを聞いた夢乃さんと渉君は慌ててお婆さんが出て行った扉に走って行ったが、出ようとした所で天空時氏が帰って来た所だった。
「お二人とも慌ててどうされました、ハナさんは今お休みになられた所です。どうぞお戻り下さい」
天空時に促されてしぶしぶ二人は部屋の中央部に戻されてしまった。




