2次試験通過者 雹島 恭介(ランゲルハンス島島)③
「では、早速ですがこの男に憑いているのを落としたらいいのですね、二人ともその着物に着替えなさい」
ハナさんに言われ、慌てたように二人とも着物に着替え始めている。
それと同時にハナさんは自分の持ってきた風呂敷包みから同じような鈴と太刀を取り出し準備をしている。
「お二人とも着替えは出来ましたか」
「「はい出来ました」」
さすが双子、見事にハモって返事をしている。
「それでは渉さんはその鈴を、夢乃さんは太刀を持ってください」
おや、こう言う時普通は男性が太刀、女性が鈴のパターンが多いんだけど今回は逆か、そう思っていると。
「かおりちゃんカッコいいね、渉君もかわいいし」
望ちゃんがと言って来たので、俺もつい。
「そうだね、でも持ち物逆と思わない」
「大丈夫だよ、二人の性格からね、あれで合ってると思うよ」
「面白いことを言ってるな、俺様の見立てと一緒だぜ、夢乃が攻撃系、渉が防御だろ」
雷音君が話しに割り込んできた。
それが本当ならこの道具と人の組み合わせはピッタリだろう。
「そこの方たち少し静かにしてもらえませんか、この子達にはまだ集中が必要ですから」
「ごめんなさい」
ハナさんに怒られてしまった、でもそんな外野には関係なく、二人はすでにかなり集中しているようにも見える。
「それでは雹島さん、こちらに来てください」
その言葉に今までの元気がウソのように恐る恐る雹島は大人しく前へ歩みだしたが、その足は思うように進んでいない。
「ありゃ、足が動かへん、どないしょ」
「そうですか、良いでしょうそのままそこで行います、皆さん離れてください、さっ二人とも行きますよ」
そう言ったハナさんはすでに雹島の背後に立っていた、さらにその両脇に兄妹が向かって右側にかおりさんがそして左に渉君が立っている。
「二人ともよろしいですか、途中までやりますので最後はあなたたちで締めてください、やり方はさっき言った通りです、この程度なら失敗しても死にませんよ」
これが上の兄妹が恐れるスパルタ式教育方ということか、死なないまでも雹島さんは足が動かないなんて言ってたからどんな副作用があるか解らないぞ。
などと思っている間にも儀式?らしきものが始まっていた。
「さあ、そこにいるのは分かっています、いい加減に出て来なさい」
そう言うと鈴を激しく鳴らしながら太刀の柄で雹島さんの背中を激しく突いている。
「痛てて、もうちいと優しゅう出来まへんか」
「黙りなさい、低俗霊でも憑いたのはあなたのせいですよ、心当たりあるでしょう」
「・・・・」
珍しく雹島さんが黙っている、何か深い事情でもあるんだろうか。
さらに激しく柄で叩いているが今回は雹島さんは何も反論をせずにいる。
「外れましたよ、始末はかおり、渉、任せました」
そう言い終るとハナさんは総理の隣にあった椅子に座ってしまった。
そして今度は座ったまま指示を出している。
「渉もっとゆっくりと心を込めて鳴らしなさい、ほらかおり、相手に対して正面から・・・」
鈴を鳴らし太刀を振るっているのは見えるんだが、こちらからは何が起こっているかは分からないというか対戦相手が見えないが正解だ。
ただ一人だけ、雷音君だけは目の動きからはっきりとその相手が見えているのだろう。
「・・・そこで振り下ろす・・よし」
やっぱり雷音君には見えてたようでしっかりと反応していた、その言葉とほぼ同時に悪霊退治も終わったようだ。
「よくやりました二人とも、初めてにしては上出来です、疲れたでしょう少し休んで良いですよ」
ハナさんの態度や話し方は今までと違ってやさしいおばあちゃんという感じだ。
「終わったか、さすがにこればっかりは私達の管轄外だからな、それにいつもながら霊体が側にいると性格が変わってしまうのも相変わらずだな」
首相は感心したようにハナさんに言っているが、性格が変わるというのは今の一言でよく分かる気がする、ただ見た目も少しお年を召したような気がするのは気のせいか?
「ハナさんお疲れでしょう別室をご用意いたしましたのでお休み下さい」
天空時氏に促されハナさんはゆっくりと立ち上がり、すこしおぼつかない足取りで移動して行った。
「はぁ~、行きますよ、渉さん、かおりさん、あとの説明お願いしますよ~」
明らかに別人だろ、入って来た時は少しお年を召した奥様だったのに、今の様子は年相応といったところか。




