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~日常2~

――聖クラレチアン学園

 リボルガルド三大学園と呼ばれるそれは、敷地面積や生徒数は多いものの、周りはそれに似つかず木々に囲まれている。

 それもそのはず、この学園は都市部から離れたところにあり、かつ山の中腹部分にあるからだ。

 近辺には電車はなく、ほとんどの生徒は徒歩か自転車である。それなのになぜここまで生徒は多く、三大学園とまで呼ばれているのか。

 この学園の他に満清まんしん當田とうだ学園、セイントクロニクル魔術学園が三大学園に入る。

 満清當田学園はリボルガルドで最も学力が高いと言われ、セイントクロニクル魔術学園は最も魔術に関して優秀と言われる。

 では聖クラレチアン学園は何が秀でているのか。

 両方である。

 満清當田学園に負けないくらいの学力を持ち合わせ、セイントクロニクル魔術学園に負けないくらいの魔術力を備えている。

 本当に選びに選び抜かれた生徒しか入学できない。受験の際の倍率が五倍十倍などは当たり前である。



 長い坂を上り終えたリューイたちは、ようやく校門をくぐる。

 亮介はというと、

「――そう、縞パンにはたて縞とよこ縞があってだな――」

 いつの間にか水着からパンツの話へと変わっていた。ここまで着くのに、リューイたちにどれだけの冷たい目線が向けられたのやら……数えるだけ無駄である。

「おはよう」

 後ろから凛とした女性の声がリューイに掛けられる。

「おはよう、リリア」

 反応したリューイは、振り向いて女性に挨拶を返した。

 ふんわりとしたショートボブにスラリとした容姿。スカートから見える脚は白く細い。

 綺麗に整った顔にある双眸は、鋭いながらもどこか妖艶さを感じさせる。

 周りの生徒と比べても、その存在感は圧倒的。アイドル的オーラを身にまとってもいるようだ。実際、彼女はこの学園のアイドル的存在で生徒からの人気は高い。

 そんな彼女の名はリリア・エリーダ。

 リューイの幼なじみである。

「おぉ、リリア嬢」

 先程までパンツについて語っていた亮介だったが、リリアを見つけるとすぐにそちらへと行ってしまった。片膝を着き、右手を差し出し、まるで西洋のプロポーズでもしているかのようだ。

「リューイ、今日の実習だけど」

 この通り、リリアは亮介を完全無視である。毎度のことなのでこういう判断を取ったほうが最善と考えたのであろう。

 しかしそんなことを気にする亮介ではなかった。

 差し出していた右手を引っ込め、メガネを中指で上げる。

「リリア嬢、今日のパンツは黒ですね!」

「~~~~~ッ!?!?」

 さすがにさっきの言葉は無視できなかったのだろう。顔を赤くしてとっさにスカートの裾を両手で押さえ、亮介を睨む。

「はっはっはっ、もう俺にはリリア嬢のパンツパターンは把握済みよ!」

 なぜこの男はここまで自信満々なのかわからない。死を目前にしているという認識はないのだろうか。

「へー……ならばその記憶を消すしかないわね……。お前ごとね……!」

 いまだに顔を赤くしたリリアは手で銃の形を作り、それを涼介の方へ向ける。

 それを見た亮介は、へ?、と間抜けな顔でその様子を見ているだけだった。



「――マイン」

 リリアの指先から何かが飛んでいき、亮介の周りを囲むように四つほど何かが着弾する。

「――セット」

 その着弾した何かが言葉とともに小さな円形の物に形を変える。

「ふふっ、せいぜい死なないように頑張ることね――サンダーチェイン!」

 そうリリアがつぶやくと、亮介の周りにあった円形の物からまばゆい光がビリビリと漏れ出し、やがて大きくなる。そしてそれは亮介目掛けて飛んでいくではないか。

 それらに囲まれているため、もちろん逃げることは出来ない。

「うわああああああああああああ!! 焼けるようにしびれるぅぅぅぅ!!」

 こんな派手な光景は周りの生徒の目を引く。何せ人が雷にまみれているのだから。

 しかし被害者が亮介だとわかると、あぁまたか、と生徒はその光景を通り過ぎていく。

 それもそのはず、週に2回以上はこのようなことを繰り返しているからだ。

「でもぎもぢいいがもおおおおぉぉぉぉ!!」

「……」

 亮介が変な性癖に目覚めそうになる前にそれは止まり、そのまま倒れる。

 先ほどの亮介の言葉に、リリアは若干引いているようだ。

「まだ生きてる……」

 地面でピクピクと動く亮介へんたいはどうやら命は無事だったらしい。



「死んでたらそれは大問題なんだけどね」

 リューイは苦笑しながらそう言う。

 それはそうだ。学校で殺人なんて起きたら大問題だ。

 しかしリューイの言う『大問題』とは別の意味である。

 実は学園の敷地内では、身体的ダメージが精神的ダメージへと移行するようになっている。そのためいくら凶器で刺そうが殴ろうが、すべて精神的ダメージへ変換される。

 だからよほどのことがない限り、学園内で魔術を人に仕掛けようが死ぬことはない。

「そんなことより」

 友人が幸せそうな顔で死にそうなのに、「そんなことより」の一言で片付けてしまっていいのだろうか……。

 以外とリューイは冷たい人間なのかもしれない。



「さっき言いかけてたことって何?」

「あ、忘れてた」

 あんなことがあったのだ。忘れていても仕方がない。

「今日普通クラスと特殊クラスの実習よね?」

「そうだね」

 この学園には共に授業を受けるクラスの他に、自分が極めたいと思う魔術によって構成されるクラスがある。

 リリアが所属する普通クラスは、基礎的な魔術を更に磨くクラスである。例えば先ほどの雷、そして火や水。そういった属性的な魔術を極めるクラス。

 他にもサポートクラスや大魔術クラス、白魔術クラスに黒魔術クラス。もちろんその他もある。

 そして極めつけ珍しく、リューイが所属するクラス――それが特殊クラス。

 特殊クラスとは、この学園にある全クラスどこにも当てはまらない特殊な魔術を使える者だけが入れる。

 そのためクラス人数は少なく、全学年でもリューイただ一人しか所属していない。

 授業で魔術を使ったとある実習があるのだが、それは一人で行える内容ではない。なので一人しか所属していない特殊クラスは、他のクラスと合同で実習を行うのだ。

 おそらくリリアはそのことを言っているのであろう。

「だからペア組んであげてもいいわよ」

「んー、じゃあお願いしようかな」

「わかった」

 リリアは短い返事を済ますと、すぐに玄関へと向かっていった。

「さて」

 リューイはリリアが向かった逆の方向を向き、目の前に転がっているそれを見る。

「亮介どうしよっか」


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