遅れ
何が遅れているかは知らないが、突然そんな電話がかかってきた。
間違い電話でしょうと、最初は答えたが、何度もかかってくるうちに、何が遅れているのかが気になった。
「はい、もしもし」
「ああ、あんたかい。物が遅れてるよ。どうしたんだい」
いつもの女性の声だ。
「えっとですね、前々から申していますとおり、間違え電話です…」
「あら、いけないねえ。それじゃあ」
「あ、ちょっと待ってください」
「なんだい」
「何が遅れてるんですか、協力できるようなことなら、協力しますよ」
「本当かい、いやあ助かるね。じゃあ、明日、とある場所に来てくれな」
その場所は、家のすぐ裏の住所だ。
「わかりました」
簡単なバイト程度に考えて、翌日、俺はその場所へ向かった。
「こんにちは」
「あんた誰だい」
第一声はそんな感じだ。
「昨日間違い電話をいただいた者です」
それを聞いて、一気に態度を変える。
「本当かい、待ってたよ。さっそくで悪いけど、この場所にこのメモ通りに電話してくれるかい。電話はそこの使って頂戴ね」
「ええ、いいですよ」
今時珍しい黒電話の前にたどり着くと、ト書きも書かれたメモを見ながら、電話を掛ける。
「おう、お前か」
「えっと…そうです、私です」
「合言葉は」
「ある男のカフェラッテ」
「二人そろえばカフェデビュー。上等だ。ならまた物を送るからな」
それだけで電話は切れた。
ト書きにたどり着く前に切れてしまったので、俺は女性に聞いた。
「あの切れましたけど…」
「ああ、あの人はいつもあんな感じだから」
そういって次々と電話を掛けるように指示をされた。
翌々日、またおいでと言われていたので、俺はその日にまた尋ねてみた。
今度はなにか大きな段ボール箱が部屋の真ん中に置かれていた。
「いやあ、やっと着いたよ」
「これって、なんですか」
「ああ、まだ教えてなかったね」
段ボール箱を開けると、よくわからないボール状のものがたくさんあった。
「やっぱりわかんないです」
「まあ、いずれ知ることになるよ。予定通りとはいかなかったけど、これでどうにか始めることができるからね」
その笑みが示すところは、まったく俺には分からなかった。




