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プロローグ deafblindness(デフブラインドネス)
生まれたときから、私は世界を知らなかった。
光も、音も、気配さえも、私に届くものは何もなかった。
ただ――そこに「何かがある」。
それだけが、私と世界をつなぐ細い細い糸だった。
触れたものだけが、私の宇宙だった。
母の指の震え。
柔らかい布のすべり。
温かい液体が流れる感覚。
それらをつないで、私は世界を理解しようとした。
見えない。聞こえない。分からない。
それでも私は、生きることをやめなかった。
何もない世界にしがみつくようにして、私は生きてきた。




