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六人の竜  作者: 春道
第一章 六竜集傑編
7/16

7. Top 6 statues that cried blood

七話のタイトルはBring Me The Horizonの曲、Top 10 staTues tHat CriEd bloOdからサンプリングしました。ここから物語は本格的に始動していきます。楽しんで読んでもらえると嬉しいです。

星々が静かに瞬く夜、その輝きに見守られるように、世界の五ヶ所で静かに動き始めた運命があった。



【焔都ファルドナイト|炎の国】


紫の絨毯が敷かれた石造りの広間。そこには数百人の信者たちが跪いていた。


壇上に立つは、白髪の青年――ハーデンベルギア。その身にまとうのは、深い紫の法衣。細身でありながらその姿はカリスマに満ちている。


「我が魂は炎と共に目覚めた。今、この身に宿る力は、星の変革を告げる――」


信者たちが息を呑む。ある者は涙を流し、ある者は歓喜に拳を握る。


「六竜の力は神話にあらず。もはや現実だ。私が選ばれたこと、それはこの世界が変わるという“証”だ」


すると、荘厳な扉が音もなく開き、赤と金の制服を纏った使者が現れた。


「ハーデンベルギア殿。王都よりお迎えに参上しました」


ハーデンはゆっくりと振り返る。


「ようやく来たか。さあ、旅立とう。炎は、ついに導火線に火を灯したのだから」



【水都リュミエール|水の国】


噴水の水音が響く宮殿の中庭。その中央で、シュティア・メルクルは静かに立っていた。


青いドレスに身を包み、凛とした姿勢は水面のように揺るがない。


「シュティア様、王都より使者が到着しております」


侍女の声に頷き、彼女はゆっくりと振り返る。その後ろには、彼女の騎士、レーヴ・ガラクスの姿があった。


「光栄なことです。水の竜の器として、私のこの身、民のために使いましょう」


レーヴは膝をつき、頭を垂れる。


「シュティア様。あなたがどこへ向かわれようと、私はついていきます。剣の竜の器としても命の限り、あなたをお守りします」


「ありがとう、レーヴ」


その瞬間、水都の空にかすかな風が吹き抜けた。



【雷都グランフォルテ|雷の国】


酒場の木製の扉がガラリと開く。


中では、オスカー・シュレンが酒瓶を片手に、酒場の主人に絡んでいた。


「なぁ、もっと強いやつを出してくれって言ってんだろ?この程度じゃ、俺の舌は震えねぇよ」


「オスカーさん……またツケが……!」


「いいから、今夜は俺の人生の祝杯なんだよ」


そこに、王都の使者が現れる。


「オスカー・シュレン殿。雷穿竜の器として、王都へお連れします」


「……へぇ、ついに来たか。雷の如く駆け抜けてきた甲斐があったってもんだ」


立ち上がったオスカーは、酒瓶を煽って笑った。


「よし、連れてってくれ。面白いモンが待ってそうだ」



【教都フェルザリア|地の国】


荘厳な鐘の音が鳴り響く聖堂の中。ステンドグラスを背に、シュテルン・ヒンメルは静かに祈っていた。


その神々しいまでの金髪と白い肌は、まるで天から降り立った聖女のようだ。


「シュテルン様。王都より使者が……」


「ええ、分かっています。彼らも私が拒まないことを分かっていたはず」


シュテルンは微笑みながら立ち上がる。清らかなその表情の奥に、誰も知らぬ思惑が潜んでいることなど――誰一人として知る由もなかった。


「導かれた道を歩むのが、私の務めですわ」



【時の国・辺境領アルバ村】


アルバ村の朝――ゼクスが去ってから数日が経っていた。


村長がゼクスの母の墓前にいると、背後から笛の音が聞こえてきた。


「よぉ、じいさん。今日もご機嫌麗しゅう」


緑のマントにハット、軽薄そうな笑みを浮かべた吟遊詩人。

その美しい顔立ちはどこか掴みどころがなく、声も滑るように心に入り込む。


「……お前か」


「歓迎されていないようで悲しいな。僕はただ旅の途中で、ちょっと懐かしい顔を見に来ただけだよ」


吟遊詩人――その正体は誰も知らない。ただ、村長は気づいていた。

この男が、普通の詩人ではないことを。


「ゼクスは行った。時穿竜の器に選ばれてな」


「うんうん、よかったよかった。運命の歯車は、思ったよりスムーズに回り始めたようだ」


「……お前、何者なんだ。本当に“詩人”か?」


「詩人だよ、間違いなく。歌を紡ぎ、物語を語るのが僕の仕事。

ただし、物語の筋書きが少しばかり“特別”ってだけ」


男は竪琴を軽く鳴らし、目を細める。


「ゼクスくんには、ちゃんと教えておいてくれたみたいだね。――“時”は残酷だから、剣を持って抗えって」


「だからあいつに剣を教えろと……?」


「そう。“時の器”ってのはね、ただ選ばれただけじゃ意味がない。

その心と刃が鍛えられて、初めて“未来”を穿てるんだ」


村長は無言のまま男を見つめた。


「お前、本当は何のためにここに来た」


吟遊詩人は小さく笑う。


「物語において重要なのは、“種まき”だ。

あとで咲く花のために、今のうちに土を整えておく。僕はただ、その手伝いをしてるだけさ」


風が吹き、彼のマントが大きく翻る。


「僕の願いは一つだけ。“良い歌”を唄いたい。それだけなんだよ」


「ゼクスをどうする気だ」


「導く。でも、選ぶのは彼だ。僕は舞台を整えるだけ。

……その先で彼がどう決断し、どんな運命を選ぶか。それが知りたい」


「……いずれ、あいつはお前を斬ることになるかもしれんぞ」


「その時は、それが“歌の終わり”ってことだよ」


吟遊詩人は、どこか満足そうに微笑むと、空を見上げた。


「やがて、運命の音が聞こえる。その時、彼がどのような選択をするかで、世界は大きく変わる」


「お前、何を――」


「じゃ、また来るよ。村長殿。星は回り、竜は目覚める。……それを詩にするのが、私の仕事だからね」


その姿は、木漏れ日の中に溶けるように消えていった。


「どうやらお前の息子は何か大きな世界のうねりのなかにいるみたいだ。全く、これじゃお前さんも天国でゆっくり休んでられないだろう」


村長は墓に向かって静かに呟いた。


そして、六人の器が選ばれ、王都へと向かい始めた。星は静かに、運命の螺旋を回し始める。


読み終わった後にTop 10 staTues tHat CriEd bloOdを聴いてもらえると自分が伝えたい物語が幕を開けた雰囲気をさらに感じれます。良ければ聴いてみてください!私なんかが言うまでもなく素晴らしい曲です。

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