ツイてない日のちょっといい再会
短編初挑戦です
学校からの帰り道、突然の大雨に打たれて公園の東屋に駆け込んだ。天気予報では、今日は雨が降るなんて言ってなかったのに、これがゲリラ豪雨というやつか。
一瞬で服がびしょ濡れになり、今日はツイていないなと項垂れる。
誰も来ないだろうと油断し、上半身裸になってシャツを絞っていると、バシャバシャと走る足音が近づいてきた。まさか、他にも雨宿りに来る人がいるのか? 面倒だなぁとぼんやりそちらに目を向ける。
カバンを頭上に抱えて雨を防ぐようにしながら、一人の少女が東屋に飛び込んできた。服が濡れて肌に張り付き、少しエッチな下着が透けて見えている。
……でかい。
何がとは言わないが、彼女は母性が大きなタイプであるらしい。
雨に打たれてツイていないと思っていたけれど、今日は意外と良い日かもしれない。
「君も雨宿り? 今日はお互いツイてないね」
黙っていても気まずくなるだけなので、軽く声をかけてみた。彼女は人がいることに今気づいたらしく、驚いた様子を見せたが、顔を見ると安心したように微笑んだ。
その顔に見覚えがある。彼女は小学校が一緒で、俺も含めた男子にとても人気があった山上咲月だ。
「竜馬君だよね? 久しぶり! 元気にしてた?」
笑顔で再会を喜んでくれる彼女は、相変わらず性格も良さそうで、こちらとしても嬉しくなる。
「あいにく雨に打たれて気分が落ちてたけど、仲間ができて嬉しい気持ちになったよ」
笑いながら言うと、彼女はムッとした表情で頬を膨らませる。昔からの癖は治っていないようだ。
「いつもなら折り畳み傘持ってるんだよ! 昨日雨だったでしょ? 今日は予報で晴れだったから干してたの……」
事情は自分と似ていた。タイミングが悪かったらしい。
「俺もだよ。母さんが大丈夫って言ってたけど、完全に外れたな」
ははっ、と笑っていると彼女は何かに気づいた様子で自身の胸元を見ると、恥ずかしそうに頬を赤らめながら両腕を交差して隠した。
「服がびしょびしょでスケスケだ!気付いてたなら教えてよ!」
……俺の視線が彼女の胸元に向いていることに気付いたようだ。バレたか。
「もうちょっとしたら言おうと思ってたんだよ……」
乾いた笑いで誤魔化すように言った。
気付くまで見ておくつもりだった事実は言う必要はないだろう。
その後、雑談を楽しんでいると雨が止んできた。楽しい時間も、もう終わりかもしれない。
「……雨、やんじゃったね」
「やんだなー。まあ、普通の雨とは違ったし、降るのがあっという間なら、止むのもすぐか」
そろそろ彼女と別れるタイミングかなと思っていると、突然咲月が口を開いた。
「……そういえば、LINE交換してないね」
「そういえばそうだな……。交換しよう。雑談楽しかったし、これからもよろしくな」
家への帰り道に思い返す。
今日はツイてる日だったな。
夜、スマホを手にして、彼女の名前を画面で探す。今日LINEを交換したばかりなのに、なぜか特別な名前に見える。
……送ろうか、やめようか。少しだけ迷った末に、軽くメッセージを打ち込む。
『今日はありがとう。まさか雨宿りがあんな再会になるとはね』
『久々に話せて嬉しかった』
既読がつくまでの時間が妙に長く感じたが、すぐに返信が届いた。
『こちらこそ!ほんとビックリしたけど、すごく楽しかった』
『変わってないね、竜馬くん』
『咲月も昔と変わらず明るくて、ちょっと安心したよ』
『えへへ、嬉しいな』
『また今度、時間ある時にでも遊びに行こう?』
『もちろん。今度の休みにでもどっか行こうか。楽しみにしてる』
画面越しの文字だけなのに、会話が続くだけで気分が明るくなる。
今日の偶然は、思った以上に大きな意味を持っていたのかもしれない。
感想等あればやる気に繋がります。
読みたい作風などあれば言ってもらえると
書くかもしれません。