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プロローグ

或る所に、未だ出来たばかりの世界があった。


神々が大地を創り、植物を創り、生命をも創り出した。


(ただ)、神は退屈だった。


故に、神は自らを崇める存在を生み出した。


それが今の人間で有る。


神は人間だけで無く、他の種族も創った。


大樹から樹妖族(エルフ)を。鉱物から鉱人族(ドワーフ)を。獣から混獣族(セリア)を創った。


人間やその他の種族は、自らの適する地で、各々安定した生活を始めた。


然し、此れでは退屈で有ると感じた神々は、怪物を創り出す事にした。


スライムやゴブリン、コボルト等の御し易い生物から、ワイバーンやヒュドラ、ドラゴン等の明確に人間の脅威と成り得る存在も創り出した。


人間は、其れ等の事を魔物と呼ぶ様に成った。


神々は、人間等が無意味に殺されるのも嫌い、其々(それぞれ)の種族に魔法の力を与えた。


こうして、此の世界の均衡は保たれていた。



或る日、神々の世で事件が起こる。


一柱の神が離反したのだ。


其の神は人間等を嫌っていた。


人間等を優遇する神達に耐えきれず、神の世を離れ、いつしか其の神は魔神と呼ばれる様になった。




魔神は人間を特に嫌っていた。


無意味な行動、無意味な競争、無意味な同族争い。


人間などと云う醜い生物は淘汰されるべきとも考えていた。


然し、魔神自らが手を下すと神達が妨害する可能性が有った。


故に、人間の皮を被り、人間の街で暴動を起こす事も多々有った。


魔神からすれば忌々しく有ったが、此れも人間を滅する為と無理矢理自らを納得させていた。


其の日迄は。



魔神は人間の女に一目惚れをした。


其の女は世界一美しいとは云わずとも、整った顔立ちをしており、誰にでも優しく接していた。


魔神は、其の女と親族にだけは自らが魔神で或ると云う事を隠さなかった。


そして其の女も、魔神に恋をしていた。


幾ら堕ちたとは云え、魔神も元は神。


整った顔立ちをしており、何より自らの為に健気に働く魔神の姿を見て、好意を抱いていたのだ。


そして、二人は結婚をした。


無論、親族は大反対だった。


悪名しか無い魔神。更に堕ちた神なのだ。何をされるか判ったものでは無い。


しかし女が押し切り、二人は夫婦と成った。




或る日、二人は子宝に恵まれる事となった。


二人は大層歓喜し、子が産まれるのを今か今かと待ち続けて居た。



然し、其れが悲劇の始まりだった。


二人は勿論、親族に子宝に恵まれた事を話した。話してしまった。


親族は直ぐに村中の人間にその旨を伝えた。


その結果、直ぐに村中の騒ぎと成った。


人間との間の子とは云え、魔神の子なのだ、常識外の力を持って居たとしても何も違和感は無い。


此の話は村中に広がり、周辺の村にも広まり、何時しか其の国全部で知られる様に成った。


と成れば、国王にも其の噂が耳に届くのも自明の理。


此の国王は、敬遠な神の信徒で有った。


神と敵対する魔神。其の子が産まれようとして居る。


最早其れを殺さぬ道理は無くなってしまった。


国王の命により、国中が魔神の夫婦を殺そうとした。


魔神達は逃げた。魔神は自らの権能で人間を殺す事は容易かった。


だが、其れは女が悲しむ。また、魔神も人間の感性に染まって居た。


故に、人間に手を下す事は無かった。



其れが人間を助長させた。


魔神は最早神の権能を持た無いと思わせてしまった。


その結果、女は殺された。


惨かった。魔神は自分が悪であるとは認識している上で、悪行を働いていた。


然し、目の前の人間は如何(どう)か。


正義の心を持っている者が多い。中には純真無垢な少年も居た。


その全員が、目の前の女を惨たらしく殺しているのだ。


然し、幸いだったのは、腹の中の子が無事だった事だろうか。


女が殺される数刻前、女は子を産み落とした。


神の要素は無い、唯の人間の子に見えた。


魔神は自身の幸運を喜んだ。


女が残した忘れ形見、真っ当とは言えずとも、最期まで育てると誓った。


だが、悲劇は終わらなかった。



人間は、魔神を捕らえようとした。


無論、唯の人間。元より魔神に抵抗する術等無い。


だが、人間は頭が回った。


我等の力だけで対抗でき無いのなら、神の力を借りれば良いではないか、と。


人間は、神の力を借りた。


「魔神が人間に危害を加えている。魔神を討伐、若しくは捕獲するのを手伝ってほしい」と虚言を吐いた。


神は、人間の虚言を見抜いていた。


然し神は、人間の虚言よりも魔神が世界に居る事による均衡の崩壊を恐れていた。


故に神は、魔神捕獲に協力した。



結果は呆気なかった。


大量の人間、其れに加え神も相手をする事になった魔神は、抵抗したものの、早い段階で捕獲された。


魔神は、何よりも自らの力で子に危害が及ぶのを恐れていた。


結果的に、其れが裏目に出てしまったのだが。


魔神は捕えられ、神の世に送られた。


魔神は神達の手に依って、永久に解けぬ封印を施された。


魔神の子は、奴隷となった。


初めは惨殺するつもりだったが、神の要素は無い(ただ)の人間に見えた為、奴隷となった。


しかし、其の国で内乱が起こった際、奴隷達は解放された。


其の中には、魔神の子も居た。


そして魔神の子は、名を隠し、姿を変え、誰にも見つからず過ごした。




そして数十年後、魔神の子は、魔物を統べる者、全ての魔の頂点に立った。


此れが、この世界初めての、"魔王"である。




        ─────世界歴史書 第一章三節 魔王より抜粋

















「お前は産まれてはいけなかったんだ!!」

「近寄るな!穢らわしい」

「せめて我らの玩具になれ!」

「何故お前はのうのうと生きて居られる!」

「「「「消えろ!」」」


嗚呼。どれだけ罵倒を浴びせられただろうか。


塵。屑。死ね。消えろ。

言われすぎて、慣れてしまった。


拷問も文字通り死ぬ程された。


鞭打ち、水責め、指締め、火責め、焼きゴテ。

傷が癒えていなくとも、毎日された。



こんな生活が、長い間続いている。


俺は、何の為に産まれてきた?


俺は、何故生きている?

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