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眠る魚

作者: 祁答院 刻

いまは眠った魚たちも

覚めればきっと泳ぎだす

わたしはそれが惜しいから

ひっそりと浴槽にかれらを投じた

あまりに惨めなやさしさの牢獄


ぬめぬめした重さに

ぬるい湯は数瞬もたついた

おやすみなさい

人肌にけがされた ペールオレンジの湯船の中で


あなたたちの象徴は

乳児の歯のようなべらべらした鱗

頭の中でそっと思い出して それだけで

全身に冷ややかなふるえが走る


エレベーターをひっそりと降りて

湿っぽい暗がりに出たとき

わたしは決まって後ろをふりかえる

そこには 閉じかかったエレベーター

わたしを排出して無機質になった

灰色のエレベーター


人間は

虚を突かれては狂ったように泳ぎだす

のぼせたように赤いキンメダイ

静脈がかるくうなる強烈な魚の目


魚のにおいのように迷走していく わたしたちの社会


おやすみなさい みんな

おやすみなさい 風呂場の魚たち

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