裕太郎 6
彼女と出会ってから約3か月。とにかく警戒心の強かった彼女と連絡ルートを構築し、食事にこぎつけるのにも本当に苦労した。食事の最中も警戒心は強く、下手にスキンシップでもしようものなら簡単に捨てられてしまったであろう。涙は股のゆるい女とはだいぶ扱いを変えざるを得なかった。
ただ、ここまで来れば大丈夫だ。俺は安心して彼女の問いに答える。心を落ち着けて。
「まぁ、明日休みだし。別にいいけど」
と答えた。長い旅路だった。今夜、この肉体を存分に楽しめることを想像すると、心臓の鼓動が一層早くなるような錯覚に陥る。
「ねぇ、裕太郎。裕太郎にとって結婚ってどういうイメージ?結婚ってどういうものって考えてる?」
彼女は今年で25歳。そろそろ「結婚」という文字がちらつくのだろう。
目の前の彼女は少し潤んだ瞳で見つめ返してくる。俺の手を握り、そしてそのなまめかしい身体をわずかながらに密着させて。自身の中にある必至で抑えつけていた欲望が膨れ上がる。欲望に脳が支配されてくる。この涙の身体を一生俺のものにしたい。そういう欲望が。
あまりに具体的な想像をしてしまっていたためか、頭の中がひどくぼんやりしている。意識をしっかりせねば。性欲のすべてに頭の中を支配される寸前で我に返った。理性的でいなくてはならない。彼女にここでがっかりさせるような言葉を選んではいけない。事を成すまで彼女を失望させてはいけない。そして、彼女に俺の感情を悟られてはいけない。俺はどういう言葉が良いか熟慮したあげく、こう答えた。
「んー、そうだな。お互いを束縛するもの、かな」
髪の毛一本ほども思っていないことをサラリと言う。やや哲学的な表現だったが、頭の弱そうな涙に通じただろうか。ただ、これで結婚を意識した男性ということを十分にアピールできたはずだ。
改めて思うが、自分もなかなか罪な男だ。家に帰れば、妻がいるというのに。




