裕太郎 4
翌日、お礼の返事としてはかなり杓子定規な彼女からの返信が自分のメールボックスに入っていた。俺のことはただの変人とか、ヤバイ奴とみなしているのだろうか。あんなことでお礼を言う人間はやはり稀だろうか。
このあとはどうするのか相当悩んだものだったが、その日以降受付に涙がいるときは一言「おはよう、元気?」と挨拶をするようにした。これがぎりぎり社交的かつ常識的な人間の振る舞いなのだと思ったからだ。これが功を奏したのか、しばらくしたあとに幸運に恵まれることとなる。
ほぼ毎日のように涙を見かけるたびに挨拶を欠かさなかった俺だが、そんな進捗なき日々を過ごしたあと、とある幸運が訪れることとなる。
その日はたまたま19時頃に退社することができた日だった。もちろん帰宅後に自宅でする仕事を残していたのだが。
地下鉄への駅への帰り道にたまたま恋焦がれた彼女の後姿を目にする。
彼女もちょうどこの時刻に退勤だったようだ。なんたる幸運か。
彼女の前までいき、今回は思い切って声を掛けてみる。
「こんばんは。白羽さん。今、帰りですか?」
「あ……こんばんは。あの……そうですね、はい」
日頃の挨拶が功を奏したか、しっかりとした返事をしてくれた。ここは思い切って押してみる。
「白羽さん、嫌なら遠慮なく断っていい、ちょっとこのあと一杯だけ付き合ってくれませんか?」
「え?」
押せるときには押してみるものだ。このときの偶然がなければ、今夜の食事などなかったのだから。




