めぐみ 8
二人の共同生活のための新居も見つけ、このアパートには昨日荷物を運んできたばかりだ。引越の段ボールを一つずつ開封しながら、私は涙に訊ねた。
「ねぇ、涙。そういえばさ、あのときのことなんだけどさ」
「なんですか、めぐみさん」
「裕太郎のやつを部屋に入れたじゃん、あの後ってやっぱりアレしたの?セックス?」
「えー、めぐみさん、それ知りたいんですかー?どうしよっかなぁ」
あのとき裕太郎を部屋へ連れ込んだ涙は無事だったのだろうか。私もこの計画を練ったときから、感じていた若干の不安。部屋の中で野獣と化した裕太郎に涙は無理やり犯されてしまったのだろうか。それとも涙はそれもそれで良しと感じていたのだろうか。
「いや、別にしてても、してなくても、どっちでもいいんだけどね。やっぱちょっと気になるじゃん。涙は男にも興味あったって別にいいわけだし」
「ふふふ、めぐみさんったら。そんな変な心配しているんですね」
心身ともに健康となった涙が蠱惑的にほほ笑む。そんなに私は勘が悪くなってしまっただろうか。
「大丈夫ですよ、ちゃーんとそういうことも考えて対策しておきましたから」
「対策?それはつまり何かうまいこと抜けられたってことね」
涙は引越の段ボールの中から、手錠と猿轡を取り出しながら、こう答えた。
「うつのときに処方された睡眠障害の薬、お酒に細工したときに全部使い切っちゃったんですよね。もし今度必要になったら、また処方してもらわないといけないんですけど。だから、もううつに戻らないことを願っているんですよね。あはは」
涙が見せる子供っぽい笑顔に私はクスッと笑ってしまった。涙の荷物から出てきた拘束具を見ると、なかなか抜け目ないな、と思ってしまう。彼女と他愛ないこんな生活がずっと続くことを願う私がいる。




