めぐみ 7
前々から夫の浮気については気づいていた。残業が多い仕事であることを強調していたのは、一時は事実だったのかもしれないが、いつのまにか浮気をする時間にすり替わっていったのは想像に難くない。夫の持ち物を調べてみても浮気相手を匂わすものは全く見つからなかったが、そういうヘマをする男でもないことは十分理解している。おそらく見えないところでやり取りをしているのだろう。それが固定の一人なのか、複数なのかは結局わからなかったけれど。
夫婦の離婚手続きであれば、協議離婚をすることも法律上は可能だと調べた。だが、確かな理由や証拠もなく、一方的な離婚を主張することは、説明としてかなり難しい。こちらから申し出た場合には良くても対等条件、最悪の場合不利な条件で離婚をしなければなくなる。私の稼ぎだけで今後生きていくことは正直難しい。
どうにかして不貞を理由にあの男から金をむしり取って別れてやりたい、と考えるようになった。
不貞行為の証拠さえあれば、示談や裁判となっても有利に話を進められるのは間違いない。
また、示談金なり賠償金なりの金額もその証拠有無で変わることになり、その後の生活も安定させることができる。
私は涙に離婚をしたい旨を相談した。そして、夫の名前を明かした際に涙が非常に驚いていたことをよく覚えている。あの男は、私の大切な人に手を出そうとしていたことに。
離婚をした後、私と涙は二人で共同生活をしていく。二人で今後生活していく資金を得るためにも、不貞行為の証拠をつかみ取る必要がある。
計画をした段階では、夫と涙の接点はほとんどなかったようだった。だが、一度だけ涙は帰り道に声を掛けられたことがある、と言っていた。その時は魔が差してしまい、食事に行ってしまったのだが、食事中もいやらしい視線で事あるごとに私の身体に触れようとする不愉快な男だったという。あの男のことだ、機があれば手を出そうとしていたことは間違いないだろう。
涙に転職先がどこかないか相談されたときに、ちょうど夫のグループ会社で派遣社員を募集していた関係から、涙に紹介してみたのだが、まさかこういうところで夫と改めて繋がるとは思っていなかった。偶然とはいえ、彼女の負担が大きい話ではあるが、試してみる価値はある。ただ、あの男が涙に手を出してこなければ、また別の証拠を押さえる計画を立てるまでで。
計画の上では、向こうから再度接触を仕掛けてくるまでじっくり待つ作戦とすることにした。あの男の性格であれば、何かしらでまた声をかけてくるに違いない。
数週間もたつと涙から連絡があり、やはりまた食事に誘ってきた、とのことだった。そのまま何回か不自然な流れとならないように、会う回数を増やしていき、不貞行為を捉えるチャンスがないか探ってみる。毎回事前に涙から連絡をもらう段取りとしたが、もしうまく部屋まで連れ込めそうな日であれば再度直前に涙が私に連絡をし、マンション前で私が待機する、という決め事をあらかじめ作っていた。
自宅アパートのドアに入るところさえ捉えられれば、目標は達成できる。ただ、その後部屋に連れ込んでしまった後の対応についてはどうするか、ちゃんと涙と話してはいなかったが、結局どうなってしまったのだろうか。思い付きの計画だったため、細かい決め事もなく進めてしまっていたのを少し後悔している。写真を撮った後、彼女はどう切り抜けたのだろうか、それともあの男に弄ばれてしまったのだろうか。




