めぐみ 1
寒い。ウインドブレーカーのボタンを全部閉めて、身体を縮こませて、壁に寄りかかる。自分でも何をやっているのだろう、と思いたくなるような光景だろう。スマートフォンのメッセージには、ちょうど今レストランを出たとのことで、あと15分少々もあれば自宅に到着するそうだ。
私が待ち続けた瞬間が訪れようとしている。もうしばらくの辛抱だ。
なぜこんなことをしているのか。それにはちゃんと理由がある。それは夫婦仲にある。
私の日常生活というものはあまりに退屈だ。
普段であれば、仕事を終えると、夕方18時に自宅へ帰ってくる。まだ外は夕暮れで真っ暗というほどでもない。
夫・裕太郎の帰りは大概遅い。夕飯はいつも私一人。何を食べようか迷う日々がほとんど。正直、似たような食事を毎日食べているせいもあり、何を食べても何ら変わらないような気がしている。
裕太郎と結婚をしてから、正社員としてバリバリ働くのは性に合わないと思い、定時退社のできる派遣社員として現在は働いている。そのため、残業などほとんどない生活を私は過ごしている。健康的な生活が送れている一方で、無味無臭の毎日が続いている。生活費や行楽費用も夫に言えば、出してくれるだろう。なんの不自由もない生活のはずなのである。だがしかし、この空虚な感覚はなんなんだろう。
なんで彼と結婚してしまったのだろうか。今思うと後悔ばかりの想いに駆られてしまう。




