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証拠(仮題)  作者: 戌山卓
羽田涙
13/24

涙 7

 翌週、私はめぐみさんに会いに表参道へ来ていた。めぐみさんは昔と変わらず、明るい表情で会った瞬間に抱きしめてくれた。


ルイ!元気だった~~?」


 その抱擁の暖かさに自然と目が潤んできてしまう。


「え、あの……はい、元気でした……」

「?」


 めぐみさんはすごく勘がいい。久しぶりの再会だったにもかかわらず、私の話し方に違和感を覚えたようで、すぐにこう答えてくれた。


「涙、何か今苦しんでるよね?昔と違って顔も疲れてるみたいだし……何か相談乗れることなら何でも言ってね」


 めぐみさんが予約してくれた瀟洒ショウシャなカフェでご飯を食べながら、最近のめぐみさんの近況や、旦那さんの愚痴など他愛ない話を聞きながら。カフェを出て、落ち着ける公園で私に話を促してくれた。


 毎日終電まで働いていたこと。残業がほとんど付けられず、ほとんどがサービス残業だったこと。土日も疲労でプライベートがほとんどなかったこと。理不尽とも言えるパワハラを先輩から受けてきたこと。めぐみさんだから話せた。話すことができた。いつの間にか涙が止まらなくなって俯きながら喋っていたけれど、めぐみさんは優しく抱き寄せながら私を励ましてくれた。


 すべてに絶望していたあのとき、めぐみさんが声を掛けてくれていなかったら、多分今の私はいなかったのだと思う。


「お金を稼がなくてはいけないの確かだけれど、無理をしてはだめ。まずはちゃんと医者に行ってうつ状態を治しなさい。そして、それを治してから涙のペースでできる仕事に転職しなさい。もしそういうのもわからないなら、私がツテでどっか仕事探してきてあげるから!」


 めぐみさんのアドバイスは適格で、私はそれをすぐに実行した。


 そんな紆余曲折があって、ようやく今の職場に移ってきた。

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