蛇と猫の狩り
2人は到着してからすぐさま、 入口の近くにいる見張りの兵を白虎は飛び蹴りで刎ね飛ばし、 その近くにいた兵の頭を青龍が大鎌で切り殺した。 亡骸は目を開けたままだった。
「こいつら弱いね」
白虎は退屈そうに呟いた。
「雑兵だろ、 気になる点としては装備が軽装すぎる……」
青龍は死んだ兵士の右腕を引きちぎり喰らいつく。
「あんまり美味しくねぇ! 蛙や鳥、 トカゲの方がまだマシだ!」
青龍は文句を垂れながら、 白虎に食いかけの右腕を渡す。
「これを食えって事!?」
白虎は青龍にそう聞くと、 青龍は親指を立てる。 腹が立ったのか即座に中指を立てた。
(はぁ……めんどくさ)
白虎はそう思いながら一口食べた。 その瞬間、 嫌そうな表情を浮かべた。 2人は村の中に入って行った。 村の中は貧相な家が並んでおり、 泥や傷んだ青果物、 腐った水の様な鼻につく青い臭いが漂っていた。 臭いに敏感な白虎は嫌悪の表情を浮かべながら鼻をつまむ。
「それにしても誰もいないね」
白虎は腕を放り投げる。
「みんな避難したんじゃないかな?」
青龍は楽観的だったが、 何かを察知した白虎は彼の腕を掴み物陰に隠れる。
「蛇之……広い場所に人が集められている……」
白虎は小声で青龍にそう囁いた。
「どうしてわかった?」
「臭いよ……キツイ臭いの中に血と汗臭いが漂って来た」
白虎がそう言うと青龍は鼻をクンクンさせるが何も臭わないが彼女のいい匂いがする。
「お前のいい匂いしかしないよ~」
「死ね!!」
白虎は肘鉄で鳩尾に攻撃した。 クリーンヒットしたのかその場でえづく。
「ハイハイついてきて!」
白虎は青龍を担ぎながら臭いを辿って歩いていく。 しばらく歩いていると広場のような場所に着いた。 そこではボロい服をエルフの男たちが武装している雑兵たちに囲まれていた。 2人は静かに物陰に隠れる。
「エルフ共……麦の収穫が平均を下回っているではないか……これはどういう事だ?」
トラウト王国の兵士デュースがエルフの老人に問い詰めた。
「い……今は時期が…」
エルフの老人はそう返答した。
「時期がだと!? ふざけた事をぬかすな!」
デュースは激昂し剣を抜く。
「お前何年この仕事をやっている……それくらいわかって当然の事! 」
老人の胸ぐらを掴み叩きつける。
「ふざけるな!」
短髪で金髪のエルフの少年がデュースにそう言った。
「よせ!ベリン……」
老人は短髪で金髪のエルフの服を掴んだ。 このエルフの名前はベリンと言う。
「どうかお許しください!」
デュースに許しを請う老人。だが……
「ダメだ」
デュースは地を這う害虫を見るようにエルフ達を見下ろした。
「せめて私だけでもいいので……村の者には手を出さないでください」
その場で土下座し村民の命を救おうとする村長。 それを見ていた青龍は白虎に小声で「向こうに隠れて戦闘態勢に入れ」と命令した。 すると、 白虎は口パクで「わかった」と答えて雷と同じくらいの速さで向こうに移動し物陰に隠れた。
「フハハハハ」
デュースが勝利を悟ったように笑い始めた。
「フッ……無様なもんだな昆虫ども!!」
その言葉を聞いたベリンは隠し持っていた手鎌を兵士に投げつけた。 しかし、 デュースは鎌を跳ね返した。
「愚かな……」
「クソ……」
ベリンは拳を地面に叩き付けた。
「おい、 お前らここのエルフを全て殺せ! 見せしめだ……冥土の土産に聞かせてやろう……俺の名はデュース=サイクル、 未来の騎士王!!」
デュースはそう命令するとエルフの村長を剣で刺し殺した。 それに続いて他の雑兵達もエルフを無差別に殺し始めた。
「やめろ! やめてくれ!」
必死に叫ぶベリン。 しかし、 彼らには届かない。
「ダメだ」
デュースは笑顔でとても嬉しそうだった。
「ベリン落ち着け!」
短髪で黒髪のエルフがベリンを落ち着かせる。
「チェイン……」
ベリンは唇を噛みしめる。 短髪で黒髪のエルフはチェインと言う。
「落ち着けチャンスはある……」
チェインがそう言った瞬間、 2人は【転移】で青龍は大鎌を白虎はトレンチナイフを取り寄せた。
「いくぞ白虎!!」
青龍は大声で白虎に命令した次の瞬間、 物陰から勢いよく飛び出し「『腐食の荊棘』!!」と言い放った。 すると、 青龍の右手の親指以外全てが薔薇の荊の様にその指を長く伸ばし、 その場にいた4人の雑兵をその荊で突き刺す。 刺された場所からじわじわと肉が壊死し始め、 激痛を感じながら兵士はこの世を去った。 瞬時に指を元に戻す。
(さーて仕事と行こうか!)
白虎はトレンチナイフで兵士の首を切り裂いた。 想定外の事態に雑兵達はパニックに陥り、 あたふたし始めた。 彼女はこの隙を逃さない、 雑兵の腹にテンポよく蹴りを入れて建築物にぶつけていった。 耐久性がとても低い為、 バラバラと崩れ雑兵を圧死させた。
「『蛇の一閃』!!」
青龍は一瞬でその場に居る兵士数名の首を次々と大鎌で刎ね飛ばした。 大量の肉袋の栓が抜かれたため、 辺りは血の池地獄と化した。
「終わったぞ猫都!」
「早いね! 思ったより楽な作業かもね!」
2人はとても余裕そうな雰囲気を醸し出す。
「何をしている! そいつらを殺せ!」
デュースは部下にそう命令したが、 足が震えてて動けなかった。
「今だ!」
ベリンが叫ぶとチェインと白髪短髪のエルフと黒髪ロングのエルフ、 黒髪短髪のエルフが一斉に動き出し落ちていた武器を拾い、 近くにいた雑兵を殺害した。
「クソ虫が!」
デュースはエルフを攻撃しようとしたが、 白虎に先回りされ蹴り飛ばされた。
「あんたが悪いんだからね……」
白虎は物凄い速さでデュースを殴り、 地面に叩きつけた。
「こんな小娘ごときに……」
デュースは口から血を吐いた。
「ふん! 空手を舐めんじゃないわよ!」
つい調子に乗ってしまった白虎。 しかし、 ほんの少し隙を与えてしまった。
「残念だったな小娘」
デュースは白虎の腹を蹴り飛ばした。
(いっ……あれ全然痛くない……)
白虎は呼吸を整え得物を構えた。
「行くよ! 『紫電一閃』!!」
雷鳴の如く目の前に現れ、 袈裟に斬る。 斬り裂かれた体は出血はしなかったものの内臓は露出していた。
「馬鹿な……」
辛うじて息のあるデュース。 這いつくばって逃げようとしたが、 青龍はそれを逃さなかった。 奴の首元に農家の刃がかけられていた。
「ごめんな~俺ゲスには厳しいのよ」
「クソガキ共ぐぁああああああああ!!!」
「じゃあな。 来世はまともな生き方するんだな」
青龍は奴の頭を踏み、 ゆっくりと大鎌を持ち上げ首を落とした。
「終わったぞ! 猫都」
青龍は一仕事終えた様な感じで白虎とハイタッチをする。
「任務完了!」
白虎ははしゃいで近くにあったのデュースの首を青龍に投げつけ、 キャッチボールをし始めた。 それを見ていたエルフの何人かは嘔吐した。
(頭大丈夫か? こいつら……)
その場にいるエルフ達はとても心配そうな表情をした。
「あの~あんた達誰?」
ベリンは2人にそう聞いた。
「青龍です!」
「白虎です!」
2人はコミカルなポーズをとった。
「何やってんだあんたら!」
ベリンがツッコミを入れた。
「名前知らないけど村から来た」
青龍は何故か変な動きをし始めた。
「ホントそれな~」
白虎も便乗してダンスを踊り始めた。
「お前らは動かんと喋れんのか!!」
ベリンがキレの良いツッコミを入れた。
「てか何でお前達襲われてたの?」
青龍はベリンにそう質問した。
「わからない……」
ベリンは顎に手をそっと置いてそう答えた。
「もしかしたら気晴らしとかかな?」
白虎は人差し指を顎に当てて可愛いポーズを取る。
「今年は不作だったからな~」
白髪で短髪のエルフの少年はそう言った、 瞬間その場にいる全員が悩み始めた。
「とりあえずここから移動した方がいいんじゃない?」
白虎は青龍にそう提案した。
「そうだな!よし! ね――じゃなくて白虎! 道案内よろしくぅ!!」
青龍は白虎に道案内するよう命令した。
「やだ!」
白虎は青龍の命令を拒否する。
「はぁ!?」
「だって私もエメちゃん探したいもん!」
白虎は頬を膨らませ子供の様に拗ねた。
「エメちゃん抱っこしていいから」
青龍は白虎の耳元で囁いた。
「わかった! じゃあ行ってくるね!」
白虎はとても嬉しそうに飛び跳ねた。
「ということで! 兵士を殺した奴ら以外は白虎について行ってね~」
青龍の発言により白虎はエルフたちを自分の村まで案内した。
「白虎! 武器しまっとけ」
青龍は大声でそう言うと武器を【転移】して動き始めた。
この時の青龍はまだ知らない――この後、 洒落にならない化け物と遭遇する事を。




