小さな引き金
変身したスダチの姿は、 ニホントカゲの様な骨格で脚は鱗、それ以外は毛で覆われている。
頭部は柴犬となっており、 前脚は犬の様な手をしているが爪が鋭い。 両腕にはミノカサゴの鰭を蝙蝠の羽の様な形状をした翼が付いており、 翼の縁は刀の様に鋭い。体色は白色で目玉は赤色。 全長約14m。
濃い霧の中、 冒険者達にはスダチの影しか見えていないため、 小動物の様に怯えていた。 まるで、 隅に追いやられたネズミの様に――
「おいおい嘘だろ……」
1人の冒険者が口を開いた次の刹那、 スダチの尾による薙ぎ払いを喰らいその冒険者の頭が弾け飛ぶ。
「そんな……聞いていな……」
短髪の女の冒険者がそう呟くと、 スダチが頭から噛みつきボリボリと音を立てながら食した。 その場で耳をつんざく咆哮を上げる。
「まじか……!?」
その場に居た者は即座に耳を塞ぐ――同時に霧が晴れスダチの姿が露わとなる。
「おいおい嘘だろ……都市伝説じゃなかったのか……」
ローブを纏った冒険者が腰を抜かした。 ケレヴが冒険者全員に向かって「逃げて!」と叫ぶ。 すると、 8人の冒険者が逃げ始めたが、10人の冒険者は果敢にスダチに立ち向かうも、 あっけなく爪で切り裂かれ、 叩き潰された。 逃げた冒険者は酒井とネオンにより首を刎ねられた。
「終わった……」
ケレヴがその場で崩れ落ちると酒井が取り押さえた。 それと同時にスダチは元の姿に戻った。
「私は……ローバロ王国のケレヴ……国王の命令でここを攻めたが……もう時間が……ごめんなさい……あいつらが勝手に……」
ケレヴはその場で黒い血液を口から吐き出す。
「酒井! 離れろ!!」
スダチが警告すると、 酒井はバックステップで後ろに下がった。 その瞬間、 ケレヴの上半身が爆発。 上半身が跡形もなくなり墨のような体液が流れ出る。まるで、 割れたコップから零れた水の様に――
「えっ……噓でしょ」
酒井が唖然とした表情を浮かべた。
「とりあえず本部に戻るぞ! 確かローバロ王国だっけ?」
スダチは2人にそう聞いた。
「ローバロ王国です」
「ローバロ王国です」
酒井、 ネオンの順に返答していった。
「ローバロ王国です」
「ローバロ王国です」
「ローバロ王国です」
「誰か止めて!!」
スダチがそう叫ぶ。
「なんか……凄く嫌な予感がする……」
酒井がボソッと呟いた。 この後、 ローバロ王国の本軍が関雷雨とぶつかる。




