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武田慎二さんの悔い2

「きょうか〜!しんじ〜!いつまでも寝てないで早くおりてきなさ〜い!」


 いつも聞いていた声、俺がいつも起きるのが遅いからと声をかけてくれる母の声。

 目を覚ますと見慣れた俺の実家の天井だった。


 ・・・本当に過去に戻ってしまった。


 いやまだ分かんないぞ、もしかしたら酔って実家に寝に来たのかもしれない。

 でももし本当に過去に戻って来れたならあの子を救うことができる?

 そんな事を考えていると「ガチャ」と俺の部屋の扉が開く。


「早く起きよ慎二、お前には勇者としての責務があるだろう」

「・・・賢者様」

「うむ、早く起きよお前が怒られている間にわたしはこっそり降りる」

「最低な賢者様だな」

「これが世の心理なのよ」


 これで過去に戻ってきたと確信した。この何度もやり慣れた朝の茶番。懐かしい。

 姉ちゃんと最後にあったのは正月だったがその時よりも明らかに若い。化粧でなんとかなるとかいうレベルを超えていた。

 パジャマのまま階段を降り懐かしい椅子に座ると母が朝ごはんを目の前に置いてくれる。


「早く食べちゃいなさい遅刻するわよ」

「う〜い」

「全く起きるの遅いんだから、京香きょうかもね!!」

「ギクッは、は〜い」


 俺を囮にバレないように降りて来た姉ちゃんもしっかりとバレている。

 そうして向かいの椅子に座る姉ちゃん。


「勇者よ、もっと目立たないとダメであろう」

「賢者様流石に無茶です」

「言い訳をするな!」

「いいから早く食べなさい!!」

『は〜い』


 そう叱られ朝ごはんを口にする。朝ごはんは目玉焼きとベーコンと白米と味噌汁、とても普通な朝ごはんだ。

 だが一人暮らしを初めてから最初は自炊していたがそのうち自炊が面倒臭くなり、ほとんどコンビニ弁当などで済ませていた。

 こんなに温かく美味しいご飯は久しぶりだった。


 これだけでも過去に戻れて良かったと思えるがやらなくちゃならない事がある。

 そう思いながら学校へ行く準備を終わらせ家を出る。


「行ってきま〜す」

『行ってらっしゃい』


 学校への通学路を懐かしく感じながら夏の暑い空の下をルンルン気分で歩く。

 すると後ろから走ってくる足音が聞こえてくる。


「よ!慎二!」

「あ〜おはよう」


 この金髪の不良少年のように見える男は神崎かんざき 賢人けんと、不良に見えるがハーフだから金髪なだけだ。しかもハーフだからなのか顔が整っている。

 俺の親友とも言える幼なじみだ。


「なんだなんだ!元気ないぞ!」

「朝からそんな元気なのはお前だけだよ」

「何言ってんだ!こんな綺麗な空の下に生まれてきたんだ!楽しく行こうぜ!!」


 と背中をバシバシと叩かれる。力が強くてめちゃくちゃ痛い。


 その後は雑談などをしながら学校へ着く。


「おはよう〜慎二くん」「よっす慎二〜」「しんじくん今日寝癖ついてるよ〜」「慎二くん今日部活あるの?」

「おはよう〜みんな」

「相変わらずの好かれようですな〜」

「そんなんじゃないって」


 ただ全員に対して優しくしてただけなのに何故か周りはモテてると勘違いしている。好感を持たれるのは嫌じゃないがモテてるのとはまた話が別だ。



 そうして教室へ入ると俺は少女を探す。助けられなかったあの子を


「・・・陽菜ちゃん」


 俺はボソッと一言、口から言葉が溢れる。


 目線の先には風に揺られたカーテンを手で払いのける綺麗な黒髪ロングの女の子。



 その子の名前は蓮見はすみ 陽菜ひなちゃん

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