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俺の戦い

 新たに評価付けてくれた人、ありがとうございます! 四月最終日に総合p190……どうせなら200に行きたかった(調子乗んな)。

 というわけで、今日は早めの更新です、どうもシファニーです。まあ、休日で暇だったですしね。頑張って書きました。

さて、今回はなんと珍しく我らが主人公の司君の戦闘回です(それでいいのか?)。

 第八十四部、第三章第三十二話『俺の戦い』です。どうぞ!

 さーて、いっちょ揉んでやるかと舞台に上った先で、俺は見知った顔と対面していた。


「――――――――?」


 強面でマッチョなおじさんが、嫌らしい笑みで言ってくる。まあ、理解はできない。ちなみに、名前は知らん。顔を覚えてるだけだ。

 そう、なんと武闘会開会直前でリルに絡んできてあの男が、準々決勝での俺の対戦相手だったのだ。正直、意外であった。ステータスは、確認してみたところ大したことない。だが、どうやら固有能力が優秀であるらしい。


『狂える者』


 狂拳闘士と呼ばれる職業に就く彼の固有能力は、理性を失う代わりに絶大な力を得るというありがちなものだった。世間では七つの大罪の一つとして数えられている悪魔の、その固有能力であったと、しんさんが言っていた。

 七つの大罪というのは、この世界が始まって史上最も恐ろしく罪深い七つの事件のことだそうだ。

 一つ目は先ほどの悪魔による大陸崩壊。

 二つ目は原初の七大魔獣に数えられる魔獣のうちの一匹が起こした大虐殺。

 三つ目は海の王と呼ばれるリヴァイアサンという海獣の影響で発生した大嵐。

 四つ目は火山を住処にするサラマンダーと呼ばれる四大精霊の一体が起こした大規模火災。

 五つ目は初代獣王による邪神復活計画。

 六つ目はとある人間の科学者による人体実験によって生み出された魔人によってもたらされた国家崩壊。

 七つ目は世界樹の中心にかつてそびえたユグドラシルの崩壊。

 最後のユグドラシルの崩壊については詳しい資料が残されていないらしい。しんさんですらわからないと言っていた。恐らく、神によって情報のほとんどが隠蔽されているのだろうとも。非常に興味深い話ではあるが、今は置いておくとしよう。


 さて、そんな七つの大罪に数えられる事件の主犯である悪魔の持っていた固有能力、というだけあってその内容はえげつないものだと思われる。理性という代償で手に入れる強大な力。俺の冷徹者やカレラの不死鳥と似ているかもしれない。俺たちのものは固有能力ではないが、代償とシビアな条件下でのみ発動する大幅強化、という点では相似する部分も多い。

 俺の冷徹者の代償は情、カレラの不死鳥の代償は生命力と魔力、あいつの狂える者の代償は理性。それぞれが結構大きな代償を背負っていると言いたいところだが、比較してみると俺の冷徹者の代償って大したことない? まあ、その代わり他の二つに比べて発動条件が厳しいから、一応公平なんだと思う。

 カレラの不死鳥が生命力が半分を下回った時、調べたところ狂える者の発動条件が殺意を抱くこと。そして冷徹者の発動条件が殺意よりも深い感情に支配されたとき、だから、一応発動条件としては最難関になるだろう。

 不死鳥と狂える者は敵と戦闘をしていれば絶対に発動するだろうが、俺の冷徹者はそうとも限らない。思いの強さによっては発動しなかったりするので、使いたくても使えない、なんてこともしばしばある。それに、使いたいと願うほど発動しなくなる感じもあるな。きっと、冷徹者を使いたい、っていう意志が邪念かなんかになって殺意以上の感情を抱けなくなってしまうのだろう。


 では、能力の話はそこまでにして戦況の確認だ。


 すでに試合は始まっていて、何ならあいつはもう狂える者を発動している。どうやらリルに対する殺意が相当溜まっていたようだな。司会が開始って叫んだ時には理性を失って襲い掛かってきていた。ちなみに解除方法は殺意を抱いた相手に自分が満足いくまでダメージを与えることだ。あいつが俺にどれくらいの殺意を抱いているかはわからないが、寸止めどころではなく殺しきるつもりでいるかもしれない。だとしたら怖いが、俺の生命力と防御力がそこらの参加者と同じだと思ってもらっては困るよな。まあ、攻撃を受けるつもりもないが。


「――――! ――――! ――――!」


 相手の大きな声が舞台に響く。と言っても、理解はできない。きっと、オラァッ! とか叫んでいるのだと思う。


 理性を失っているためか一つ一つの攻撃にキレがなく、さらに言えば裏もない。フェイントの一つもしかけてこない単調な攻撃だが、確かにむやみに受ければ一般人ならよくて致命傷、最悪死ぬような攻撃だった。俺にしてみれば皮膚剛化や物理攻撃耐性もあるのでダメージは微々たるものだろうが、強力なことに変わりはなかった。それに、ダメージは少なくても絶対痛い。受けるのは御免被る。

 

 相手は大ぶりの攻撃を連続で放ってきている。俺でも見切れる程度なので攻撃自体は怖くはないが、勢いが怖い。本気で人を殺そうとしてる目とか、あとは何だろう。熊? みたいな迫力がある。筋肉で大きく見えるのもあるだろうが、そこら辺の猛獣かよって思うほどに勢いがあった。

 いや? 正常に思考できる猛獣たちの方がまだこいつよりも落ち着いているかもしれない。本能的に勝てないと悟ったら逃げたりするようだし、ありえない話ではないよな。


 ちなみに、俺とあいつの速度はお互い一般人にとっての最高速をとっくに超えている。相手の肉体強化はかなりのもののようで、身体能力だけで言ったら今の俺を優に超えてると思う。ほんの少しでも頭を使った戦いをあいつが始めれば、あっという間に負けてしまうのでは? と思えるほどに。

 それでも落ち着いていられるのは剣術のカウンターやフェイドアウト、あとは思考加速や皮膚剛化といったバリエーション豊富な対近接格闘家用のスキルがあるからだな。正直、スキルのおかげで負ける気がしない。魔法だって使えるし、距離をとって氷攻めにすることもできる。氷漬けにして放置してやってもいい。

 それをしないのは王女様の目があるから。あの人に魔法を使うところを見られたら、色々とやばい気がする。強者ってのは魔力の流れや魔法の精度で相手の実力を見抜けるものだと、リルやルナは言う。俺には解析鑑定があるので意識したことはないが、自分の力が高まるにつれて強者とはどういうものかを理解し、それに当てはめて相手を観察することで強者かどうかを判断できるようになるとのこと。

 かななんかはある程度見ただけで強さが分かってしまうらしいし、カレラも正統派騎士だからか相手の足運びや構え、息遣いなんかでもある程度の実力が分かってしまうのだという。

 もちろん、俺の解析鑑定みたいな具体的な強さを把握するのは無理だろうが、少なくとも自分より弱いか強いか、勝てるか勝てないか程度の判断をつくとのこと。全く素晴らしい目を持っていらっしゃる。


 そういうわけでむやみに魔法を使うと俺が決して人間程度が出せる実力ではないことがばれてしまう。いや、今までの戦いですでに普通の人間でないことぐらいはばれてるだろうな。超人であることくらいはばれてそうだ。だが、重要なのはその先を知られること。リルの力を使ってるとか、そういうところだ。

 超人であることがばれても、隣の国に何人もの勇者がいることを考えればそこまで不思議ではないと認識してくれるだろうが、魔獣や亜人の関係者だとばれたらただでは済まないだろう。最悪、その場で殺される。俺が自意識過剰なだけかもしれないが、王女様に目を付けられてる気がするしね。さっきから鋭い視線が王家がいる席から飛んできてる気がするんだよ。鳥肌が立つ。


 さて、色々な意味で無茶はできないと再認識できたところで、戦闘に集中するとしよう。状況的には俺が追われているわけだが、いつでも反撃はできる。ただ怖いのは、弱すぎる反撃ではあいつの上昇した防御力のステータスによって耐えられてしまうことだ。相手の間合いに入ってしまって、それで相手が自由に動ける状態というのは避けたい。

 ちなみに、俺は今素手だ。剣がこの前折れたからな。


 俺の拳は決して強くない。あいつの肉体とステータスなら全力で殴っても四、五発は耐えてきそうだった。それを考慮して戦い方を考えるのならば……手刀だろう。

 実は、剣術って手刀にも適応されるんだよね。だからカウンターとかフェイドアウトを戦略に取り入れようと思っていたわけだし。属性剣術を使うことはないだろうが、ちょっとずつ手刀で相手の生命力を削っていこうと思う。地味だが、仕方ない。


「―――――、――――――!」


 数分間も逃げ回っていると、じれったく思ってきたのか相手が何かを叫びつつ(理解はできない)両手を叩きつけるように超大ぶりの攻撃を仕掛けてきた。俺は躱したが、叩かれた舞台の地面は大きく砕け、クレーターが出来上がった。しかも、両手はうまっている。どれだけの勢いで殴ったんだ? あれ。

 だが、その代わり隙は大きい。攻撃しても、碌な反撃を受けることはないだろう。


 と、言うわけで。


「さあ、反撃と行こうか」


 俺は小さく笑みを浮かべてそう言い放った。


 ちなみに、会場の連中には理解できない。

 司君は相も変わらず地味です。結局強くはなれない主人公であった。めでたしめでたし……という風にならないように彼には頑張ってもらいたいものです。

 「俺は頑張ってるからな!?」

 おっと? どこからか司君の声が? いや、そんなわけないですね、彼は念話が使えませんから(茶番乙)。

 はい、というわけで今日は時間があったので前書き後書きに遊び心を加えました。少しでも笑ってくれていたのなら嬉しいです。

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