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山登り

 総合pvが11000を越えました! 本当にありがとうございます!

 第六十三部、第三章第九話『山登り』です。どうぞ!

 街から北に向かってひたすら歩くこと二日。カレラがいることもあり本気を出すことはできなかったが、かなり早く進行してきたはずだ。

 カレラが超人で食事も休憩も少なくてもよかったのが楽でよかったな。と言っても俺は歩いていないのだが。


 そしてそろそろ件の場所に着く。リセリアルとオレアスを繋ぐ街道のある雪山だ。ここには冒険者ギルドでA級とされるグリフォンが生息しているのだとか。

 俺はグリフォンという魔獣がどんな奴か分からないが、まあ、そのギルドでA級認定される程度の魔物ならば負けることはないだろう。何ならカレラの練習台にちょうどいいくらいの強さなのではないだろうか。

 超人で、優れた才能を持つカレラは、俺と同じような、というのは少し可哀想だが実戦で経験を積めば間違いなくもっと強くなれる。A級冒険者になるくらいならわけないだろう。


 それに、彼女は特別な能力を持っているようだしな。あまり使う機会はなさそうな能力だが、間違いなく強力なものだ。見てみたいものだな。


「そろそろですね」

「そうだな。雪山での戦闘は経験がないだろう? 自信はあるか?」

「自信は、あまりありません。でも、やる気があることだけは認めてほしいです。機会があれば、私はグリフォンとの一騎打ちをしてみたいです」

「なるほどな。よいのではないか? ここまでの道のりで出会った魔獣相手では力を測りかねていたところだ。ちょうどいい」

「あ、ありがとうございます!」


 リルに褒められて嬉しいのか、強敵と戦っていいと言われて嬉しいのか、カレラは声を弾ませてそう言った。この子もまた戦闘狂なのだろうか。それとも、この世界の住民は戦闘が多すぎるが故に強くなるという一心で生きているのだろうか。

 俺は俺で強くなりたいとは思っているので気持ちは分からなくはないけど。


 雪山は目の前まで迫っていた。一番高い標高で言うと1000メートルくらいだが、街道して利用されているのは山の周りを大きく周る街道で、その街道は高さは300メートルくらいの場所だ。

 山の東側を遠回りしながら進むので道のりはかなり長いらしい。まあ、俺たちの目的はこの街道を進むことではないので関係ないが。

 グリフォンはこの山の山頂近くに巣を作っているらしい。確認されているわけではないが住み着いてからしばらくたっているので子どもがいてもおかしくはない、とも言われている。いたところで脅威にはなりえないだろうがな。


 グリフォンというのは色々な動物の特徴を一つにまとめた魔獣らしい。日本では作品によるが鷹の頭と羽がライオンの体にくっついている、みたいな感じだと認識している。

 もちろん飛行能力はあり、かなりの速さらしい。攻撃手段は体当たりや爪での斬撃、あとは噛みつかれるとかだろうか。筋力が強いためそれらの単純な攻撃でもかなり脅威だということだ。


「この道をまっすぐ行き、出来るだけ山頂に近いところまで向かう。そうしたら魔法か何かで気を引いておびき寄せる。わかったな?」

「はい、心得ました」

「注意を引くのは妾に任せていいかの」


 リルが指さしたのは街道ではなく整備されていない獣道。ほとんど斜面に沿ってできており、街道を歩くよりもずっと山頂の近くまで行きやすい。

 普通こんな傾斜の道を通ったら体力の減りが尋常じゃないと思うが、俺たちの中にそんなことを気にするやつはいない。なので気にせず進んで行く。

 足元には雪が僅かに積もっており、余計な体力の消耗は避けられない。今はかなり雲行きが怪しく、今すぐに雪が降ってきても驚きはしない。


 進むにつれて雪の積もる高さはどんどんと増えていき、今は脛のあたりまで雪が積もっている状態だ。かなり歩きづらいだろうが、四人の進行速度は一般人が整備した道を歩くそれと大差ない。

 まあ、この状態で普段よりはかなり遅いのだが。


「カレラ嬢、休憩が必要ならいつでも行ってくれ。そこまで急いでいるわけではない」

「い、いえ……ま、まだいけます。いや、行かせてください」

「そうか……。いつ魔獣に襲われるか分からない。ここから上はもっと雪が酷くなるだろう。休憩できるうちにしておきたい。自分の体のことをしっかりを把握したうえで判断してくれ」

「わかりました」


 やはり、リルは身内には甘い気がする。冒険者ギルドで冒険者に見せた態度とは大違いだ。いや、仲間を大切に思っているが故の行動だったのかもしれない。

 リルがウザくてやった、というよりはカレラたちに不快な思いをしてほしくなかった、という理由があるのかもしれない。まあ、リル自身がウザくてやったと言われても大いに納得できるが。


 さらに雪山を昇るころ三十分、山道が整備されているわけではないのでわからないが山のちょうど真ん中くらいだろうか。ついにカレラがばててしまったので休憩にすることにした。時間にしてもそろそろ六時くらいになるころなのでちょうどいいだろう。出来れば山小屋なんかで休みたいところだがもちろんそんなものはない。小さな洞窟を見つけてそこに身を置くことにする。

 かなが適当に結界を張ってくれたので休憩中を襲われることはないだろう。襲われたところで対応できるだろうが。


「すみません、皆さんの足を引っ張ってしまって……」

「別に構わん。どちらにしてもここらへんで休める場所を探しておかねばすぐに夜になっただろう。そうなっては移動は難しいのでこのタイミングでこの洞窟を見つけられたのは幸運といえるだろう。むしろ我からは感謝を送っておこう」

「っ! ……あ、ありがとうございます」


 すました顔で言うリルに、カレラは少し頬を染めながら返事をした。

 ……え? もしかしてフラグたった? リルのお嫁候補降臨か? まあ、越えられない種族の壁があると思うけど。


 そんなことはどうでもよく、洞窟の比較的広いところまで進み、四人はそこに腰を下ろす。かなもルナも余裕の表情だが、休むことに異存はないようだ。

 リルはディメンション・ポケットから用意したパン屋ら干し肉やらの食料を取り出してみんなに配る。それから十分ほどは食事の時間になり、それが終わるとリル話を切り出した。


「思いのほか雪による影響が大きいが、明日にはグリフォンと接敵するだろう。今日はできるだけ英気を養ってくれ。作戦の確認は明日出発前に行う。今は余計なことを考えなくていい。見張りは、交代でやるとするか。我、ルナ女史、かな嬢、カレラ嬢の順で二時間ごとに交代、それを朝まで続ける。いいな?」

「異存はないかの」

「大丈夫です」

「……」


 ルナとカレラが了承し、かなが雰囲気を察して取り敢えず、といったふうに首肯を返す。ナイス判断だぞ、かな。

 というか、かなが一言も喋らないことをいつか問い詰められそうで怖いな。ここまでの二日間もずっと一言も喋っていないし、いい加減にカレラが疑問に思っても不思議ではない。


「しばらくはくつろいでいていいぞ。我は洞窟の入り口付近で見張りをしている。皆が寝付いてからに時間がたったらルナ女史を起こしに行く」

「わかったかの。それじゃあ行ってらっしゃい、かの」

「ああ」



 リルは要件だけ伝えると洞窟の入り口に向かった。

 洞窟の入り口には薄い半透明の壁があり、雪の侵入すらも防いでいた。強度は問題なさそうだし、雪山に住む魔獣が襲撃してくることは不可能だろう。さすが精霊の力を借りた魔法である。


 そんなふうに感心していると、突然体がぐらついた。とっさに足に力を籠めると、その通りに踏みとどまった。どうやらリルが憑依を解いたらしい。

 隣を見るといつの間にかリルが狼の姿で座り込んでいた。俺もそれに倣って壁を背に地面に座る。


(司殿、カレラ嬢をどう思う?)

(突然だな)


 何か話があるのだろうとは思っていたが、意表を突かれて少し驚いた。


(まあ直接関わっているわけではないから何とも言えないけど、努力家で向上心があるいい人だなぁ、と)

(そうか……いや、それはそうだな。これは我の問い方が悪かったかもしれない)

(というと?)

(我は、なぜだかあの少女に覚えがあるのだ。最近ではない。何十年、もしかすると何百年も前の話かもしれぬが、昔あったことがあるような……)


 リルは狼の顔で器用に遠い目をしながら言った。


(既視感、ってやつか? そんなことならよくあると思うが)

(そういうものだろうか。年のせいか、もしくは単に思い出せないか。思い違いの可能性も否定できないが、それでも記憶のどこかにあるはずなのだ。どんな奴だったか、それが思い出せなくてな。しかし、こんなことを司殿に尋ねても仕方ないな)

(それもそうだな……。まあ、別に無理して思い出すわけないだろ。何十年も前の話なのだとしたらカレラなわけないんだし)

(それもそうだな。悪い)

(いや、別にいいけど)


 リルが少し口元を緩めたので、俺も小さく笑い返してやった。

 もうそろ春休みが終わってしまう、ということで今日は見たかったアニメを片っ端から見てました。課題は終わってません()

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