初クエスト
昨日は休んでしまってすみません。
第六十二部、第三章第八話『初クエスト』です。どうぞ!
冒険者になった翌朝、朝飯を済ませた俺たちはさっそく冒険者ギルドに向かっていた。相変わらず俺に俺の体の操作権はない。
冒険者ギルドに向かう道のりを四人で歩いていると、それなりに人目を集める。まあ、容姿の影響が大きいだろうな。俺のことじゃないぞ? 後ろの三人のことだ。
うちの連れたちは皆容姿端麗だし、銀髪も赤髪も目立つからな。かなの猫耳フードも目立っているかもしれない。
「何だか人目を集めていますね。やはり、この赤髪が目立つのでしょうか……」
「そうかもしれぬな。……まあ仕方のないことだろう。……カレラ嬢は庶民に顔を覚えられているのか?」
「いえ、そんなことはないはずです。王立学校の生徒たちは皆爵位以上を持っている者達ですし、こんなところにいるような人たちではありません。王立学校は貴族街の中にありますので、庶民と顔を合わせることはありませんでした」
「では、問題ないか。顔が知れていたら色々と厄介だったが」
「それは、そうですね……。ご迷惑はかけたくないですし、身元が割れるのは防ぎたいですね」
カレラとリルがそんな会話をしながら歩いていると、すぐに冒険者ギルドに着くことができた。入ってみると、朝だからかは分からないが昨日よりもたくさんの人でにぎわっていた。
それもあってかかなりの視線を集めている。というか、普通に結局見た目の問題だろうか。四人組の子どもで、そのうち三人が女。冒険者にふさわしい団体と思えないのは仕方のないことだろう。
だから好奇的な視線、というよりは不躾にもあからさまに不機嫌そうな視線を向けてくるやつのほうが多い。
子どもが冒険者をやることがそんなにおかしいのだろうか。金に困ったら命を賭けてでも働かなくちゃいけないんだからおかしい選択肢ではないと思うが。
そこまで考えて、あることに気づいた。
俺たちの連れはどう考えても、金のない貧民ではない。明らかに質のいい服を着ているし、髪の手入れもされいている。ルナとカレラは作法が完璧だし、かなは服に猫耳を付けるだなんて遊び心を入れている。……こりゃあ敵視されるのも仕方ないな。
「おいお前、ここは冒険者ギルドだ。わかるか? 女の子ぢにを三人も連れてくるような場所じゃねえんだよ。わかったらお前は帰れ。ああ、安心していいぞ。そこの三人の面倒は俺たちが見てやる」
……あれ? これもしかして敵視されている原因俺なのでは?
そう思った理由は単純で、俺の前に現れた三十代ほどのごついおっさんの目が嫉妬に染まっていたからだ。急に難癖付けてくる度胸はすごいと思うが、その行動理念はあのガキ可愛い女の子三人も連れててずるい! ってことなのだろう。
所詮男ってのはその程度である。
「あ? 死にたいなら素直にそう言え」
おっとリルさん毒舌ですね。オリィのギルドでも絡まれてたし、うんざりしているのだろうか。今回は誰がどれくらい見せしめに痛めつけるのだろうか。
「な、んだとお前! ……っふ、本当ならこの場で殺してやるところだが、ギルドに出禁を食らうのも面白くないのでな、手持ちを全部よこしたら見逃してやる?」
「……」
「んん? 今更ビビってるのか? 何か言ったらどうだ、クソガキ!」
「……」
おおっとリルさん怒っていらっしゃる。もう喋るのすら怠くなって今頭の中でこいつの首撥ねてもいいかな。いいよな? って考えていそう。
リルが黙り込んだのをビビっているのだと勘違いしている目の前の男はさらにあおっているし。
男が一言しゃべるたびに額に浮き出る血管が増えているって気づいているかな。このままだと俺の体の血管が切れるからやめてほしいんだけど……。
「さあ、さっさと金を――」
「くどい」
一閃、男の首筋に光が走る。
男の首は落ちることもなく、それどころか一ミリたりとも動いていないが、確かに切断されていた。
止めたほうがいいかな、とちょうど思ったところだったので、少し遅かったなぁ、と反省している。リルって俺たちには結構甘いけど合理的、非情、冷徹を座右の銘としているくらい情がないからな。
この場での人殺しが決してよい結果をもたらさない、と考えていれば殺されることもなかったのだろうけど……不幸なことにこの場での殺しはリルにとって何の不自由にもならない。
「《エレメンタルフォース・ヒール》」
今度は違う光が男の首を包む。かなの回復魔法のようだ。即死だったと思うが、早急な対応をすればヒールだけでも治せるのだろうか。
死んだ人間を復活されるには高位の回復魔法が必要だと思っていたが、そんなことはないのかもしれない。
男の首についていた切断の跡が消えたのを確認して、リルは再び歩き出す。
かなとリルの連携はあらかじめ話し合っていたものだろうか。もしくは今リルが念話で頼んだか。どちらにしても早急な対応のおかげで目の前の男が一度死んだと気づいたものはいないだろう。
リルが男の脇を通り過ぎた後、男の体は床に勢いよく倒れた。まあ、一度神経を完全に切断されているわけだからな。何事もないように立っていられるほうがおかしいのだ。
何事だ!? とあたりが騒ぐ中、リルは気にした様子もなく受付へと向かう。
「こんにちは、司さん。クエストの受注ですか?」
「ああ、適当に見繕ってくれ」
受付にいたのは昨日試験の監督をしてくれた受付嬢だった。
「はい、そう言われると思い、準備していました。ここから約二十キロ北の雪山に生息するグリフォンの討伐、頼まれてくれますか? リセリアルとの貿易路なのですが、グリフォンが住み着いて使い物にならなくなってしまったのです。数々の商会からたくさんの報奨金がかけられていますので、報酬はなんと二億リースです」
「なるほど、確かに報酬はいいな。だが……グリフォンは確かA級の魔物だったはず。D級の我らの受けていいクエストではないだろう?」
「本来はそうですね。ですが、これはキーレさんのご指名ですし。公表することはありませんので、バレなければいいのです。文句を言ってくる輩がいても、あなたなら追い払えるでしょう? キーレさんの推測によればA級冒険者に匹敵する実力を持つ司さん」
受付嬢は人差し指を口元に当てながら言った。
バレなきゃ犯罪じゃない、とは便利な言葉だ。冒険者ギルドも実力者を遊ばせておくのは嫌なのだろう。使えるやつは使って信用を得る、そんな意志が感じられた。
しかし、そんな思惑が見え隠れしていてもリルが引き下がるような理由にはなりえない。受付嬢の言う通り、この場にいるメンツならば文句を言うやつがいても何の問題もないからな。
「では、受けるとしようか」
「畏まりました。皆さんの冒険者カードをいったん預からせていただきますね」
四人分の冒険者カードをまとめて受付嬢に渡した。
一旦引っ込んだ受付嬢を待つこと数分、受付嬢は討伐クエスト達成率、のところにグリフォン一体、と書かれた状態の冒険者カードを持って帰ってきた。
「これでクエストの受注は完了です。期限は一週間。それまでに討伐の報告がいただけなかった場合受注は取り消しになりますので注意してください」
「ああ。わかった。すぐにでも行ってこよう」
「はい、頑張ってください。ご活躍を期待しています」
そんな言葉に見送られて、リルはギルドを出た。
ギルドを出るときにもまだ倒れた男の周りに人が集まっていたため、誰に邪魔されることもなく出ることができた。
まあ、帰ってきたときが不安になるけどな。
こうして、俺たちは初めてのクエストに向かうこととなった。
あとがきで書くことがなーいと思ったらありました。
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